ディズニープラスに新しく「スター」が加わりました。
作品数はなんと16,000にのぼり、毎月コンテンツは追加されていきます。
ayumi14
配信終了、もしくは停止になったものも多いですが……
今回は「スター」から、おすすめの作品を紹介します。
まずは『ジョジョ・ラビット』のあらすじです。
舞台は、第二次世界大戦下のドイツ。心優しい10歳の少年ジョジョ(ローマン・グリフィン・デイビス)は、空想上の友だちのアドルフ・ヒトラー(タイカ・ワイティティ)の助けを借りながら、青少年集団ヒトラーユーゲントで立派な兵士になろうと奮闘していた。 しかし、ジョジョは訓練でウサギを殺すことができず、教官から”ジョジョ・ラビット”という不名誉なあだ名をつけられ、仲間たちからもからかわれてしまう。 そんなある日、母親(スカーレット・ヨハンソン)とふたりで暮らしていたジョジョは、家の片隅に隠された小さな部屋で、ユダヤ人の少女(トーマサイン・マッケンジー)がこっそりと匿われていることに気付く。ジョジョの頼りとなるのは、ちょっぴり皮肉屋で口うるさいアドルフだけ…。臆病なジョジョの生活は一体どうなってしまうのか!?
Filmarks『ジョジョ・ラビット』
原作は『Caging skies』という長編小説。
映画は第92回アカデミー脚色賞を受賞しています。
この「脚色」はたくさんありますが、代表的なものはジョジョのイマジナリーフレンドであるアドルフのことです。
第二次世界大戦、ヒトラーと少々物騒なキーワード。
実は私は戦争映画(SFではなく史実にあった戦争)が苦手で、あらすじだけ読むと『ジョジョ・ラビット』は避けるジャンルの映画です。
しかし実際は公開当時劇場に観に行き、その後もAmazonでレンタルして何度も観ています。
その理由は2つ。
- ジョジョたちの生きる時代がコロナ禍と重なること。
- ジョジョを取り巻く大人たちが悲惨さを感じさせないほど魅力的なこと。
- 映画で明かされなかった父ポールと姉インゲの所在について。
以下、ネタバレ考察を含みますので、気になる方は是非視聴後にまたお越し下さいませ!
目次
第二次世界大戦とコロナ禍
まずは『ジョジョ・ラビット』の時代と背景について考察します。
- ジョジョとアドルフの会話に『去年暗殺未遂があったが生き延びた』という内容があり、実際にヒトラーの暗殺未遂事件は1944年7月に起こっている。
- 作中ジョジョの母ロージーが踊りながら『イタリアが降伏した、もうじき戦争が終わる』と話し、実際のイタリア降伏は1945年4月。ラストでジョジョがヨーキーに、ヒトラーが自殺したことを知らされる。ヒトラーが自殺したのは1945年4月30日。
- 映画ラストでジョジョたちが住む街をアメリカ軍が占拠する描写があることから、敗戦後に連合国4ヵ国のうちアメリカ軍が占領した南部ドイツが舞台。首都ベルリンは東、主要都市であるフランクフルトは西なので、ジョジョたちが住んでいるのは田舎町であることがわかる。
- ジョジョは映画冒頭で『10歳』、映画ラストで『10歳半』と自称しているので、時間の流れは約半年。
時系列からもわかるように、ドイツが降伏する直前の半年間を描いた映画です。
ジョジョは『ヒトラーの親友になりたい』と意を決してヒトラーユーゲントに入りますが、実際には敗戦がほぼ濃厚な時期であり、それはキャプテンKやロージーのセリフからも伺い知ることが出来ます。
長い戦争に、希望を見失いそうになっている人々の心が透けて見えます。
そんな時に家にユダヤ人が匿われていることがわかって、周りの同調圧力と幼い正義感に押しつぶされそうになるジョジョ。
ジョジョがナチ信者になったのも、もしかしたら本心ではないのかもしれません。
ロージー曰く『今のあの子は、かわいかった頃のあの子のオバケ』と表現しているように、ジョジョは母も動揺するほど急に変わったことがわかります。
これはもちろん10歳になり、ヒトラーユーゲントに入る必要があったからでしょう。
コロナ禍で学校に通えない子供たちや、労働環境が激変して戸惑う大人たちなど、時代の流れに翻弄される様子はジョジョの生活と似ていますね。
子どもに希望を託せる大人たち
『ジョジョ・ラビット』の大きな魅力の1つに、ジョジョを取り巻く大人たちのキャラクターがあります。
例えば、母ロージー。
『ママなんて美人すぎて…』と言ってしまうようなユーモアと、キャプテンKを蹴り上げる度胸、エルサを自分の子供のように見守る優しさを兼ね備えています。
ayumi14
演じたスカーレット・ヨハンソンが素で出演しているような錯覚に陥るのは私だけではないはず!
ロージーの魅力はそのファッションにもあります。
戦時中とは思えない鮮やかなカーディガンやワンピース、帽子、そして太ヒールのパンプス。
街中で背景に映る人たちは決してこのような派手な格好はしていないので、あくまでロージーだけ、という設定です。
ayumi14
反ナチの活動をしているなら、目立たないように地味な格好をすれば良いのでは……??
※正直こう思う人も多いでしょうが、あくまで映画の話なので今回は右から左に流しましょう。
ロージーのファッションは彼女の思想そのものを体現しています。
つまり自由と生きる喜びを謳歌するべき、ということです。
ロージーはジョジョに、政治に傾倒するより子供らしい時間を過ごすべきということ、神様に生きる喜びを伝えなきゃと諭します。
そしてもう1人のキーパーソンはクレンツェンドルフ大尉、またの名を“キャプテン・K”。
ヒトラーユーゲントの教官として、冒頭のキャンプのシーンからラストまで出てくる重要なキャラクターです。
戦場で右目を失明したことにより降格、ヒトラーユーゲントを任されているという設定。
(後にキャンプ中にジョジョが負傷したことで事務職に降格。)
『完全に防げた敵の攻撃で負傷して“戦力外”』と語っていることから、
- 軍の規模が小さすぎ、味方が防衛しきれず負傷
- ナチスのやり方に疑問を感じたため、敢えて自ら負傷しに行き戦場を離れた
上記のいずれかだと考えられます。
さらに彼が悲観的になっている理由はもう1つ。
准士官フィンケルとセットで登場することの多いキャプテン・Kですが、彼らは実は恋愛関係にあります。
ナチスが政権を執っている限り、キャプテン・Kとフィンケルに自由恋愛は不可能なのです。
彼らは市街戦でも自作の特許を取った軍服(というより衣装)で登場し、戦場を駆け抜けていきます。
戦いが終わり、次にジョジョがキャプテン・Kに会ったときには、フィンケルはいなかったことから、彼は市街戦で命を落としたのでしょう。
だからこそキャプテン・Kは最後ジョジョに望みを託してくれたことが推察できます。
父と姉のナゾ
ジョジョの父ポールはイタリアで従軍していて不在、ということになっていますが、実際は海外で反ナチ運動をしていると語られます。
出征して2年音信不通という描写もあることから、元々は従軍というテイにして現地で行方をくらましパルチザンなどに参加したのかもしれません。
いずれにしても消息は不明ですが、ロージーもジョジョも戦争が終わればポールが帰ってくると信じてドイツで生活を続けている状態です。
一方、姉インゲについては語られることが少ないです。
彼女の死は誰も知らないということ、エルサと同い年(ジョジョの7歳上)だということ以外はほとんどわかりません。
インゲの部屋は生前のまま残されており、エルサはその屋根裏に匿われています。
インゲに何か持病があったというよりは、“突然この世を去った”という雰囲気、なのに家族以外はその死を誰も知らない。
また彼女の身分証明書が約3年前の状態から更新されていないことから、恐らく父が海外へ行った(2年前)後に亡くなったことがわかります。
インゲの死を公にすると、その死因や家族のことが詮索され、引いてはロージーとジョジョの身も危うくなるため隠しているのでしょう。
この映画の同時期に実際にあった反ナチ運動に『白いバラ』があります。
白いバラ(しろいバラ、Die Weiße Rose)は、第二次世界大戦中のドイツにおいて行われた非暴力主義の反ナチ運動。ミュンヘンの大学生であったメンバーは1942年から1943年にかけて6種類のビラを作成した。その後グループはゲシュタポにより逮捕され、首謀者とされるハンス・ショルほか5名がギロチンで処刑されたため、7種類目の印刷がおこなわれることはなかった。彼らの活動を描いた映画が戦後何度かドイツで作られ、反ナチ抵抗運動として、国際的に知られている。
Wikipedia『白いバラ』
この運動に参加した主要メンバーだけでなく、ビラ配りに加担した市民も逮捕されています。
奇しくもこの運動は南ドイツの都市ミュンヘンを中心に行われており、ジョジョたちの生活圏と近いです。
父も母も反ナチ活動をしていて、10代半ばの女の子が気づかないはずがありません。
きっと何かしらでインゲも活動に関わっていたことが伺えます。
あのロージーの娘ですから、きっと美しく聡明な女性に成長したことでしょう。
もしかして、ですが、このブログが今までで一番文字数が多いかもしれません。
私自身、世界史が大好きだったのですが、近代に関する知識が薄いため、改めて第二次大戦について調べたりなどしていたらこんなことになっていました。
ちなみにブログを書く前に『ジョジョ・ラビット』の原作『Caged Skies』を読みたかったのですが、残念ながら日本語訳が出版されておらず……
原作と比較しているブログを読む限り、映画は国ごと変更するほど脚色されているようで、天才タイカ監督の自信も感じさせます。
是非、新しくなったディズニープラスで観てみて下さいね!