2023年6月公開の実写版『リトル・マーメイド』が公開前から話題です。
アリエルの配役やその他のキャストについて話題になることが多いこの作品ですが、実は気になる点は他にもあります。
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そもそもディズニーの実写化ってヒット作が多いイメージなのに、どうして今回はこうなったんだろう?
というわけで今回はディズニーの歴代の実写作品を追いながら、なぜ『リトル・マーメイド』に至ったのかを考察していきましょう。
目次
『パイレーツ・オブ・カリビアン』の絶妙なバランス感
ディズニーの実写映画でも、早い段階で成功を収めたシリーズと言えば『パイレーツ・オブ・カリビアン』です。
2003年の『呪われた海賊たち』から、2017年の『最後の海賊』までシリーズ5作が大ヒット。
2006年の第2作目『デッドマンズ・チェスト』は世界初公開日の興行記録を更新。
最終的に世界興行収入は当時の史上2番目の速さで10億6617万9725ドルまでに達したほどの人気を博しました。
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シリーズ7作目にマーゴット・ロビーが主演する話もありましたが、白紙になったそう…
『パイレーツ・オブ・カリビアン』と言えば、世界のディズニーランドにある人気アトラクション『カリブの海賊』を実写化した映画。
まさにディズニーが生み出した、ディズニーのための映画と言っても過言ではありません。
この『パイレーツ・オブ・カリビアン』の成功の要因はいくつか考えられます。
- 魅力的なキャラクター
特にジャック・スパロウ役のジョニー・デップの演技は、観客に強い印象を残しました。 - ストーリーの面白さ
シリーズ全体で一貫して物語を展開し、キャラクターの過去や関係性などが徐々に明かされる構成も魅力的でした。 - 音楽の素晴らしさ
作曲家のハンス・ジマーによる物語の世界観に合わせた壮大なオーケストラ曲や、キャッチーなテーマ曲などが人気を博しました。 - 映像の美しさ
海賊たちの航海や戦闘、神話的な場面などをCGや特殊効果を駆使して描き出し、視覚的な面でも楽しませました。
ジャック・スパロウはこの映画のオリジナルキャラでしたが、作品のヒット後はアトラクションに登場するようになったり、パーク内でグリーティングする姿も見られるようになりました。
ちなみに『呪われた海賊たち』と同年に実写映画『ホーンテッド・マンション』も公開されています。
こちらもアトラクション原作の実写映画。
興行収入は1.82億ドル(約238億円)と同年公開の『呪われた海賊たち』の1/3程度ですが、数字的にはヒット作です。
ホラーアトラクション原作にも関わらず映画はコメディタッチだったため、家族で観れる作品には仕上がっていますが、ホラー要素や深い考察を期待して観ると物足りないという意見も。
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エディ・マーフィー主演の時点でお気づきだと思いますが…
アトラクション原作の映画として観た時、観客の期待感と実際の作品にギャップがない点でも、『パイレーツ・オブ・カリビアン』に軍配が上がっています。
それほどに『パイレーツ・オブ・カリビアン』はバランスの良い作品なのです。
ダークファンタジーの成功
2010年には『アリス・イン・ワンダーランド』が公開。
この作品は鬼才ティム・バートンが監督をしています。
この映画はルイス・キャロルの児童文学『不思議の国のアリス』を原作としています。
1951年のアニメ映画『ふしぎの国のアリス』が原作ではない点に注意が必要です。
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ティム・バートンと言えば、ダークファンタジー!
この2010年の『アリス・イン・ワンダーランド』は、ティム・バートン監督のこだわりが詰まっています。
例えば原作の挿絵をイメージしたキャラクターデザインや、色彩豊かなファンタジー世界の描写は、多くの観客を魅了しました。
原作も文字通り“不思議な”物語ですが、本作ではよりこじれた世界観やキャラクターで脚色し、一層“ダーク”な仕上がりになっているのです。
ジョニー・デップ演じるマッド・ハッターは、原作にもアニメ映画にも登場するキャラクターですが、本作では全くの別人と言っていいほど狂っています。
これは2014年の『マレフィセント』にも受け継がれています。
マレフィセントは1959年のアニメ映画『眠れる森の美女』の悪役ですが、出番はそう多くはありません。
そのキャラクターを敢えて主役に起用し、逆に人間の王ステファンをヴィランにするなど視点がガラリと変わる作品です。
今ではヴィランが主役の実写映画は定番になりつつありますが、『マレフィセント』はその先駆け。
興行収入は7.58億ドル(約1,000 億円)以上と好成績を残し、続編も制作されました。
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マレフィセントがディズニーヴィランズのリーダー的存在なのは、少なからずこの実写映画の影響があるかも…
この系譜で2021年公開『クルエラ』も成功しています。
こちらは1961年公開の『101ぴきわんちゃん』の悪役クルエラを主役にした前日譚。
彼女がどのようにして悪の道に染まっていったのかがドラマティックに描かれます。
興行収入は2.35億ドル(約300億円)。
『マレフィセント』と違うのは、魔法が存在しない現実世界のストーリーだということ。
しかしクルエラの(まさに)悪魔的な存在感や、アニメ映画への伏線となる展開、なによりファッション業界を舞台にした映画ということもあり、ファンタジーというよりはリアリティが強い作品になりました。
例えば『101ぴきわんちゃん』の主人公ポンゴとパーディタの飼い主となるロジャーとアニータを、なぜか黒人俳優が演じています。
アニメ映画ではロジャーとアニータは白人の夫妻だったので、あきらかに違和感がありました。
またアニータはファッションデザイナーであり、その縁でクルエラとも親交があるという設定でしたが、実写版のアニータは新聞記者。
ファッション界を賑わすクルエラを取材しているというポジションです。
正直これらは必要のない改変でしたが、ストーリーの本筋には深く関わらないこともあり、作品全体の評価を落とすほどではありませんでした。
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これくらいならまだ良かった…まだ
忠実な実写からの逸脱
2010年代半ば以降のディズニーの実写映画は、観客の期待を忠実に再現したものでした。
2015年『シンデレラ』、2017年『美女と野獣』、2019年『アラジン』とアニメ映画から飛び出したような世界を実写で再現し軒並みヒットします。
キャラやストーリーに多少の改変はあるものの、アニメ映画にはなかった深掘りであったり、現代人がより共感しやすいように設定した内容がほとんど。
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ジャスミンのソロ曲が始まった時はちょっとびっくりしたけど、クリストフ(アナ雪2)に比べたら全然受け入れられました!
そして『アラジン』以降はコロナ禍で、ディズニープラス独占配信に移行し迷走。
新作ですら「コアなファンしか観ない」ものになってしまい、『ムーラン』(2020年)『わんわん物語』(2020年)はあまり話題になりませんでした。
満を持して2021年にアトラクション原作の実写映画『ジャングル・クルーズ』を劇場公開しますが、評判は芳しくありません。
人気アトラクションの実写映画という点では『パイレーツ・オブ・カリビアン』と同じです。
しかしそれを意識しすぎたせいもあり、内容に意外性がなく、焼き直しのようになってしまった印象も。
そして2022年『ピノキオ』の実写映画が大きな話題になります。
それは『クルエラ』と同じく「ポリコレ配慮」した結果、ブルーフェアリーを黒人俳優が演じたからです。
ブルーフェアリーの登場シーンは決して多くはないので、多少の改変は気にならないかと思いきや、世間の反応は違いました。
スキンヘッドの黒人俳優のインパクトが強すぎますね。
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「フェアリー」に寄せる気はないことが伺えます
画像だけだとインパクトだけが残りますが、実際映画を通して観ると登場シーンはアニメよりも少なく、また人物というより概念的なキャラなのであまり引っかかることなく観られました。
ブルーフェアリーショックの後、2023年は実写映画『リトル・マーメイド』の公開が話題ですが、実はもう1つ重要な作品があります。
それは4月に配信限定で公開される『ピーターパン&ウェンディ』です。
ここではなんと、ティンカーベルを黒人俳優が演じます。
その他にもピーターパンの子分であるロストボーイに女の子が混ざっていたり、そもそもピーターパンを演じる俳優がインド系だったりと、話題には事欠きません。
2019年の『アラジン』までのアニメ映画の世界観を再現していたのが嘘のように、ストーリー以外のツッコミどころが多い作品です。
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ジュード・ロウ大好きなので結構前から楽しみにしてたんですけどね(今も楽しみですが)
そして6月には『リトル・マーメイド』が公開されます。
改変ばかりが話題になりますが、音楽面ではアラン・メンケンとリン=マニュエル・ミランダがタッグを組むというだけでも期待大です。
1989年の『リトル・マーメイド』は、故ハワード・アッシュマンが心血を注いで創り出した珠玉の名曲が満載の作品。
実写版でアリエルを演じるハリー・ベイリーが、歌手であることからも“音楽”を大切にした作品であることは間違いありません。
また実写版『リトル・マーメイド』のロブ・マーシャル監督は、ディズニー実写映画の常連でもあります。
『パイレーツ・オブ・カリビアン/生命の泉』(2011年)『イントゥ・ザ・ウッズ』(2014年)『メリー・ポピンズ・リターンズ』(2018年)など。
ここまで完璧な布陣で挑む『リトル・マーメイド』ですから、ただの「ポリコレ配慮」作品ではおわらないはずです。
ファンが広い視野で作品を観ることも大切ですが、前提として「ファンの期待を裏切らない」作品作りは忘れないでほしいものです。