【ネタバレ注意】毒親は毒親じゃない?名前と色で読み解く『私ときどきレッサーパンダ』

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ayumi

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This is the way.

ディズニールネサンス育ち。
『アラジン』は一生で一番多く観た映画になる予定。
ディズニーとスターウォーズ界隈を行ったり来たりしています。
YouTubeも更新したりしなかったり。

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ピクサー映画『私ときどきレッサーパンダ』の考察です。

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初めて劇場で予告編を観たとき「え??」と思いましたよね……

タイトルのクセが強いし、レッサーパンダという設定も不可解だし(なぜジャイアントパンダじゃなくレッサーパンダ?)……

「なぜ?」が多いこの作品について、考察に入る前にまずは概要を紹介します。

舞台は1990年代のカナダ・トロントのチャイナタウン。そこに暮らすメイは伝統を重んじる家庭に生まれ、両親を敬い、母親の期待に応えようと頑張る13歳の女の子。

でも一方で、親には理解されないアイドルや流行りの音楽も大好き。恋をしたり、友達とハメを外して遊んだり、やりたいことがたくさんある側面も持っていた。そんな、母親の前ではいつも “マジメで頑張り屋”のメイは、ある出来事をきっかけに本当の自分を見失い、感情をコントロールできなくなってしまう。悩み込んだまま眠りについたメイが翌朝に目を覚ますと…なんと、レッサーパンダになってしまった!

この突然の変身に隠された、メイも知らない驚きの〈秘密〉とは?一体どうすれば、メイは元の人間の姿に戻ることができるのか?ありのままの自分を受け入れてくれる友人。メイを愛しているのに、その思いがうまく伝わらずお互いの心がすれ違う母親。様々な人との関係を通してメイが見つけた、本当の自分とは――。

Disney『私ときどきレッサーパンダ』

監督は、ピクサーの短編アニメーション『バオ』で第91回アカデミー賞®短編アニメーション賞をアジア系女性として初めて受賞したドミー・シー。命が宿った“中華まん”を息子として育てていく不思議なストーリーの中で、親子の愛という普遍的なテーマを描き人々を魅了した。

そして2022年春、ピクサーの次代を担う彼女ならではの親子へのやさしくあたたかな視点と、独創的なアイデアがふんだんに詰まった最新作『私ときどきレッサーパンダ』が、ふたたび世界中の観客に驚きと感動をもたらしてくれる。

実は、ドミー・シー監督は今作の主人公メイと同じく1990年代にティーンエイジを過ごした中国系カナダ人であり、自身の実体験を作品に反映することでストーリーやメッセージにより一層の深みを与えている。

少女がレッサーパンダに変身するというこの奇想天外な物語に、誰もが驚き、笑って、思わず泣いて映画を観たあとは、“自分らしさは、ひとつじゃなくていい”と、どんな自分も、もっと好きになれるはず。

Disney+『私ときどきレッサーパンダ』

『私ときどきレッサーパンダ』の予習のために、ドミー・シー監督の『Bao』を観ました。

8分の短編ですが、何気なく観ただけでも気持ちを持って行かれる、引き込まれる作品ですので、未見の方は是非ご覧下さい。

下調べが済んだところで、早速考察に入っていきましょう。

他のピクサー考察にも興味がある方はこちらもどうぞ。

動画でサクッと見たい方はこちらへどうぞ。

レッサーパンダの出現条件

メイがある朝、目を覚ますとレッサーパンダになっています。

それを見た父親は「早かったな」。

どうやらレッサーパンダになる条件でわかっていることは「この家系の女性のみが対象」ということだけで、後は不明な様子です。

劇中でレッサーパンダに変身した際の経緯がわかるのは主人公メイと、その母親ミン。

2人のレッサーパンダ出現条件を比べてみます。

メイミン
気になる男の子との妄想を落書きしたものが母親に見つかり、本人やクラスメイトの前でバラされるジン(メイの父親)との結婚を母親に反対される
母娘比較

どちらも母親が引き金となり、自分を強く否定されたときだということがわかります。

逆に人間に戻るときの条件は、メイの場合、「世界で一番大好きな人たち(友だち)」と思い浮かべたときです。

このシーンはメイのイメージ内で、友だちがメイを全肯定してくれています。

つまり、【否定(パンダ)】⇔【肯定(人間)】を行き来するストーリーなのです。

メイはまだ13歳、自分で自分を肯定するだけで満足できる年齢ではありません。

レッサーパンダは比較的若い年齢のうちに出現するもののようです。

【自己否定】が【自己肯定】を上回ったとき、それは思春期や成人前後の若い頃に起こりやすいのでしょう。

赤と緑

邦題は『私ときどきレッサーパンダ』ですが、原題は『Turning Red』です。

直訳すると「赤くなる」。

タイトルにも表されるように、劇中でも色は重要な役割を果たしています。

例えば、メイの友だちはメイ(赤)、ミリアム(緑)、プリヤ(黄色)、アビー(ピンク)とキャラクターに合わせた配色。

配色について、シー監督は以下のように語っています。

『美少女戦士セーラームーン』は、我々にとって特に大きな影響を与えてくれました。映画の全体的なスタイルにおいても、例えば本作でのパステル色を使った色調や、女友達同士の友情などに、それは見て取れるかと思います。

『私ときどきレッサーパンダ』ワールドプレミア開催のご報告 ドミー・シー監督、ビリー・アイリッシュら超豪華メンバーが大集結!
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シー監督と同世代の私、涙目…!!

セーラームーンで例えると、赤=マーズ(火星)、緑=ジュピター(木星)のようにキャラクターには明確なイメージカラーがあります。

ここで中国における色のイメージについて調べてみました。

意味出典
魔よけ、吉祥、生命力の色として信仰され、中国人が最も好む色。国立民族学博物館
一般的に「エコ」「健康」「平和」Lilian中国語スクール
伝統的には力・気品・反映を意味し、帝国時代には皇帝の象徴。NEWJI INC.
ピンク恋をする様子を連想させる。E PARKビューティー
日本と似ているようで少し違う

タイトルにも入っている「赤」は、やはり中国でもメインを表す色で、日本でも戦隊ものの主役は大体赤が多いイメージです。

一方注目したいのは「緑」。

劇中で「赤」と同様に要所で出てくる色です。

  • ミン(母親)と親戚たちの服の色
  • メイのヘアピンの色
  • 落ち着こうとするメイが被る毛布の色
  • 友だちの中でもリーダー格であるミリアムの服の色

ちなみにミンはミリアムのことをあまり良く思っていないのですが、そんな二人のイメージカラーが同じというのは少し意外です。

「緑」は前述の通り「平和」を表しており、ミリアムや身の回りのアイテムの「緑」はメイにとっての「平和」。

またミンの「緑」は自分自身にとって「平和」(であるように願う)の象徴なのではないでしょうか。

名は体を表す

今回主人公の名前が「メイ」と知って、日本人の多くはこう感じたのではないでしょうか。

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メイちゃ~~~~ん!!!(cv:カンタのばあちゃん)

『となりのトトロ』のメイちゃんです。

実際『私ときどきレッサーパンダ』のメイは、メイちゃんがそのまま13歳に成長したような元気いっぱいの女の子ですし、シー監督は幼いころからジブリ作品に触れて育ったそうですから、由来の1つである可能性はあります。

しかし、中国語では「メイ」という名前にどのような意味があるのか、またキーパーソンになる母親「ミン」も同様に調べてみました。

読み漢字意味出典
メイ厳寒の中で、ほかの花に先駆けて咲く香り高い梅は、中国では逆境に耐える人生の理想。家庭画報.com
ミン明白である、明らかである、はっきりしている。Weblio

メイに関しては、ラストの儀式を行う際に、梅の花のヘアピンに付け替えているので、「梅」で間違いないでしょう。

ミンについても、彼女の生き方そのものを表す名前ですので合っていると思います。

(中国語詳しい方、いらっしゃいましたら正解を教えて下さい……)

しかし名前を付けたのがそれぞれの「母親」だと考えると、物語に深みが増します。

例えば、ミンの名付け親はメイの祖母。

ミン以上に厳格で、少しの隙も見せない一族の長のような存在で、ミンは幼少期からその期待に応えたい一心で生きてきたことがわかります。

そんな祖母だからこそ、娘に「聡明になってほしい」と願って「ミン(明)」と名付けたのでしょう。

一方のメイの名付け親はミンです。

ミンも自身の母親同様、厳格に娘を育てていますが、その本心は「逆境(真の自分を内に秘め続けること)に耐えてほしい」。

つまり、ミンはレッサーパンダを封印する人生を「逆境」、その人生を娘に継がせることに後ろめたさを感じているのです。

何の迷いもない祖母に対して、ミンの人間らしいか弱い愛情が伝わってきます。

『私ときどきレッサーパンダ』を観ていると、全編を通してミンとその一族の毒親ぶりに目を見張りますが、角度を変えて読み解くと、ミンを毒親とは言い切れないですね。


シー監督が公言している通り、『私ときどきレッサーパンダ』には日本アニメへのオマージュがたくさん散りばめられています。

小難しい考察をしたためましたが、特にシー監督と同世代の1990年前後に生まれには思い当たるフシがありまくる描写が盛りだくさんです。

スマホもサブスクもSNSもなかったけど、意味もなく楽しかったあの時代の話。

少し懐かしくて恥ずかしい(=Turning Red)な気持ちを取り戻せる作品です。

以上、『私ときどきレッサーパンダ』の考察でした。

ayumi

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『アラジン』は一生で一番多く観た映画になる予定。
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