今回は1988年公開の映画『ロジャー・ラビット』についての考察です。
ディズニーの伝家の宝刀である実写×アニメ作品。
映画界の巨匠スティーヴン・スピルバーグが製作総指揮を執っており、ディズニーランドにはライドもあります。
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でも元ネタ知らない人が意外に多い印象…
実はこの作品、楽しそうな見た目に反して信じられないほどの闇を抱えています。
それを知ると、映画を観るのはもちろん、トゥーンタウンに行った時の楽しみ方も変わるかもしれません。
ぜひ最後までお付き合いください!
目次
罪深いトラウマ製造機
「ロジャー・ラビット」で検索すると、上位に表示されるのが「怖い」というワード。
これは、ディズニーランドのアトラクションが怖いかどうかを調べる人が多いため表示されているようですが、アトラクションの元ネタになった映画も「怖い」ことは間違いありません。
演じているのは『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のドク役で有名なクリストファー・ロイド。
『ロジャー・ラビット』の翌年に『バック・トゥ・ザ・フューチャーPART2』が公開されているので、この変貌ぶりは恐ろしいです。
ドゥーム判事のラストは、大人が見ても気味が悪く、よくこの描写を採用したなと思います。
ちなみに『ロジャー・ラビット』は1981年に出版された『Who Censored Roger Rabbit?』という小説が原作ですが、原作には判事は登場せず、またヴィランの最期は似ているようでちょっと違うものです。
映画化の際にディズニーが、原作よりも不気味で印象的なオチを用意したことに狂気を感じます。
逆転するアニメと人間
ディズニー映画の実写xアニメの歴史はとても古いです。
例えば1940年公開『ファンタジア』、1946年『南部の唄』、1964年『メリー・ポピンズ』など。
これらの作品では主に歌パートで実写×アニメの表現が取り入れられることが多く、ミュージカルの高揚感と相まってとてもファンタジックになっています。
しかし『ロジャー・ラビット』では、主人公キャラが人間とアニメでそれぞれ1人ずつ。
つまりアニメであろうと、ストーリーにがっつり関与してくることになるのです。
主人公ロジャー・ラビットはトゥーンタウンの人気者で、映画にもひっぱりだこ。
歌を聞くと踊り出さずにはいられない、生粋のコメディキャラです。
もう一方の主人公エディはアニメ嫌いの私立探偵。
アニメに弟を殺されてから人が変わってしまい、アル中気味の中年男性です。
『ロジャー・ラビット』以前ではアニメパートは実写の補助的要素が強かったのが、本作ではむしろその逆。
ロジャーの妻ジェシカ、カメオ出演している夢のようなアニメキャラたち、トゥーンタウンの陽気な様子など、何から何までアニメの方が目を引きます。
アニメキャラはスター的な扱いで華やかな生活をしている反面、人間たちは私立探偵やバーの経営、その他の労働者などとても華やかとは言えない生活。
路面電車の運賃をケチって、タバコを売る子供たちなど、華やかなアニメの裏に闇を感じます。
『ロジャー・ラビット』の舞台は1947年のハリウッドなので、公開された1988年とも異なる時代ですが、それを加味してもかなりの皮肉です。
笑いと死の表裏一体
『ロジャー・ラビット』のヴィラン・ドゥーム判事には、アニメキャラのイタチたちがいます。
アニメを嫌うドゥーム判事が、アニメと共謀しているのにはある理由があるのですが、ネタバレになるのでここでは割愛します。
彼ら曰く、以前にハイエナも笑い死にしたとのこと。
ロジャーたちは笑っても何ともないことから、ヴィランキャラは笑いすぎると死ぬという設定なのかもしれません。
実はこの『ロジャー・ラビット』、コメディ作品のはずが、死にまつわるエピソードが意外と多いです。
- アニメスタジオの社長マービン・アクメの謎の死
- エディの弟は「アニメに殺された」ということが語られますが、彼は死の直前にアニメキャラの不祥事にまつわる捜査をしており、直接的な死因は「何者かが彼をピアノの下敷きにしたから」
- ディップの威力を見せるために犠牲になったアニメキャラ
ロジャーやトゥーンタウンの陽気なイメージに反して、不穏な要素がとても多く感じます。
そもそも原題は『Who Framed Roger Rabbit?(誰がロジャー・ラビットをワナにはめたのか?)』。
これはおそらくマザーグースの『Who killed Cock Robin?(だれがコック・ロビンを殺したの?)』に由来するタイトルです。
この『Who killed Cock Robin?』は、コック・ロビンを殺した犯人を探すというより、みんなで死を悼む様子が唄われています。
『ロジャー・ラビット』でもエディは弟の死を引きずっていますが、それ以外については特に惜しまれることもありません。
笑い死にするイタチたちは、むしろ安らかな表情で天に昇っていくほどです。
個人的に実写×アニメの作品については1996年公開のワーナーの『スペース・ジャム』を、リアルタイムで観た衝撃が大きかったのを覚えています。
しかしそれよりも8年も前に、バッグス・バニーが『ロジャー・ラビット』でミッキーと共演をしているのは感慨深いです。
ディズニー100周年を記念して作られた短編『ワンス・アポン・ア・スタジオ』も、実写×アニメの手法。
これからもこの作風は形を変えながらも、名作を生み出していくことは間違いないでしょう。
以上、映画『ロジャー・ラビット』考察でした。