1991年公開の映画『フック』ネタバレ考察です。
スティーブン・スピルバーグ監督を筆頭に、超豪華な製作陣とキャストが集結。
アカデミー賞5部門にノミネートされ、今でもカルト的な人気を誇る名作です。
しかしスピルバーグ自身はこの映画について「あの映画が本当に嫌い」と黒歴史認定しています。
なぜ名作と名高い『フック』がそんな評価なのか。
『フック』の魅力と実写化の闇を考察していきます。
目次
シークエルならではの魅力

ピーター・バニングは働き盛りの40 歳。
ある日彼が帰宅すると子供たちが消え去り、フック船長からの脅迫状が…。
当惑するピーターにウエンディは、ピーターこそがネバーランドからやってきた“ピーターパン”であることを話す。
かくして宿敵フック船長から子供たちを救い出すため、大人に成長したピーターパンの奇想天外な冒険が始まった!
まずにこの作品はディズニー映画ではありません。
しかし元々はスピルバーグとディズニーが共同で企画をスタートしていて、1953年のディズニー映画『ピーターパン』を踏襲する内容になる予定でした。

ayumi
以前は「なんでディズニープラスで配信してないんだ?」と思っていたくらいです…
というわけで今回は番外編扱いになりますのでご了承ください。
まず、『フック』といえば豪華なキャストです。

- ピーターパン:ロビン・ウィリアムズ
- フック船長:ダスティン・ホフマン
- ティンカーベル:ジュリア・ロバーツ
- スミー:ボブ・ホスキンス

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スミー役は『ロジャー・ラビット』で主人公を演じた俳優さんです!調べてみるまで全く気づきませんでした。
監督はスティーブン・スピルバーグ。
1989年公開『インディ・ジョーンズ/最後の聖戦』の後、少しスランプに陥り、満を持して復帰したのがこの1991年の『フック』でした。
また音楽はジョン・ウィリアムズ。
『スターウォーズ』『スーパーマン』『E.T.』『インディ・ジョーンズ』などスピルバーグとも縁の深い作曲家です。
さらに豪華な隠れキャストもいます。
それがジョージ・ルーカスとキャリー・フィッシャー。
スターウォーズ監督&レイア姫が『フック』のどこにいるのかというと、ロンドンでのシーンです。
ティンカーベルが振りまいた妖精の粉を浴びて飛ぶカップルがこの2人。

実はキャリー・フィッシャーはクレジットこそされていないものの『フック』の脚本に大きく関わっていると言われており、またスピルバーグとも縁の深いジョージ・ルーカスも交えてこのシーンを撮ったようです。

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これ以外にもまだまだ豪華なカメオ出演があるので、ぜひ本編を見てください〜!!
この豪華なキャストが、ロンドンとネバーランドを舞台に冒険を繰り広げるのが『フック』です。
現実世界で40歳になったピーターは敏腕弁護士。
ウェンディの孫と結婚した彼には、男女の子どもがいます。
ここでポイントは、ピーターは自分が”ピーターパン”だという記憶は失くしていること。
それを思い出させるのがおばあちゃんになったウェンディ。


ayumi
マクゴナガル先生…!(小声)
1991年の時点でかなりおばあちゃんに見えますが、これはメイクです。
そしてピーターを迎えに来るのがかつての相棒ティンカーベル。
このティンカーベル、アニメ版と違い普通にしゃべります。
ピーターが去った後、ネバーランドのロストボーイズたちと共に暮らすティンカーベルはバリキャリ女教師の様相でした。

すっかり体が鈍ってしまったピーターを鍛え直すティンカーベル&ロストボーイズ。
個人的には夕食のシーンが最高でした。
この夕食の移り変わりとピーターパンらしさを取り戻していく様のシンクロが、気持ち良すぎて見入ってしまうこと間違いなしです。
この夕食のシーンのように、アニメ版の『ピーターパン』をそのまま実写化していたら、生まれなかった名シーンが多いのもこの作品の魅力。
フック船長主催の野球の試合のシーンも必見です。

ピーターパンとウェンディの実は…
なぜピーターパンはネバーランドを離れ、大人になり、記憶を失くしてしまったのか。
それはピーターがウェンディと駆け落ちするつもりでロンドンに来たからです。
ピーターパンとダーリング姉弟がネバーランドを冒険して以降、実はピーターは時々ウェンディを訪ねてきていました。


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少女時代のウェンディはグウィネス・パルトロウ!可憐すぎる…
もちろんウェンディは歳を取り、ピーターは少年のまま。
ピーターが最後にウェンディの元を訪れた時、ウェンディの孫のモイラに一目惚れし、そのままネバーランドには帰らなかったといういきさつです。
しかしここに裏設定があります。
実はこの「最後にウェンディを訪れた日」、ピーターはそもそもネバーランドに帰るつもりはなかったからです。

ルフィオとはピーターが去った後、ロストボーイズのリーダーをしていた少年です。
彼は少年だったピーターから剣を受け継いでいます。
剣を受け継いだからこそ、彼自身もリーダーとしての自負がありますし、実際40歳のピーターを前に「僕がピーターパンだ!」と誇らしげに宣言するシーンも。
そしてウェンディを尋ねたピーターパンは彼女が歳を取っているのを見て、一瞬引いています。
ウェンディの肩を叩く、手だけのアップシーンですが、振り向いたウェンディがおばあさんなのを知ったのです。
しかしネバーランドには帰れないし、引っ込みがつかなくなったピーターは孫のモイラにひとめぼれをする、というのが馴れ初め。
その後ピーターは記憶を失くしていますし、モイラと家庭を築けて結果オーライかもしれませんが、元々はウェンディと添い遂げるつもりでロンドンに来たことを思うとせつなすぎます。
ちなみにウェンディはピーターの子どもたちを家に迎え入れた時「成長はそこまで」と言います。
つまりウェンディの家の中はネバーランドで、永遠に子どもでいられる場所という意味です。
ピーターと自分が一緒に生きていくことが叶わなくても、せめて自分のもとにいる時はピーターパンでいてほしいというウェンディのいじらしい願いなのかもしれません。
フック船長を解放する物語
ピーターパンが去ったネバーランドに残されたフック船長。
「退屈で死にたい」とスミーにこぼす毎日です。

そんなフック船長は度々「私の最後の冒険は”死”だ」と語ります。
退屈すぎて狂言自殺をしてスミーを困らせていたフック船長なので、冗談で言っているようにしか聞こえません。
しかしこのセリフはラストで見事に回収されます。
ピーターとフック船長の一騎打ちの最後、剥製にされたワニがフック船長を呑み込む形で崩れ落ちてきます。
剥製のはずがまるで生きているかのようにフック船長を呑み込むワニ。
悲鳴が消え、ピーターがワニの中を覗き込むとフック船長の姿はありません。

フック船長が忽然と姿を消したのを見て、ピーターやロストボーイズたちは歓喜し、ハッピーエンドということになります。

ayumi
え?誰も疑問に思わないエンド??
そもそも剥製のワニに食われただけでは物理的に死にません。
私はこのエンドは「フック船長は新たな冒険に出た」という解釈で良いと思います。
フック船長はピーターに「お前の行く先々についてまわって陥れてやる」と脅しますが、ピーターパンとして復活した40歳の彼には全く通用しません。
元々敏腕弁護士としてアメリカでキャリアを積んでいた彼は、さらに記憶も戻りピーターパンの要素が加わっている状態ですから向かうところ敵なしです。
ネバーランドに戻ったばかりのピーターを見て「贅肉でブヨブヨのこいつがピーター?」とディスっていたフック船長も、ラストの一騎打ちではカツラを取られてすっかり老人のような素顔を見られてしまいます。


ayumi
このシーンはちょっと切ない…
海賊としての美学を追求していたフック船長なので、こんな醜態を晒した後になおもネバーランドに居座るなんてできなかったのでしょう。
だから新たな冒険に出たんです。
タイトルが『フック』である理由はこれです。
ピーターも自分を取り戻してハッピーエンドですが、実はこの映画で1番救われているのはフック船長なのかもしれません。
ちなみにこの映画はスピルバーグ監督にとって黒歴史だと語られていますが、その理由の1つはネバーランドのセットに納得いっていないからだそう。
今だったらCGなどを駆使してもっと良い演出ができたのに、と近年になっても語っているのだとか。
しかし『フック』の見どころは、このセットにもあります。
まるでディズニーランドの一部で撮影したようなセットで、大勢の海賊やロストボーイズが駆け回るこの映画は、今では絶対に見られない「微妙に手の届きそうな夢」を表現しているとも言えます。
実際、監督の思いとは裏腹に、公開から30年以上経ってもファンに愛されている作品なのは、こういったエモさにもあるでしょう。
『フック』と似たテーマの映画に『プーと大人になった僕』(2018)がありますが、言わずもがなこちらはCGを駆使して作られています。
これはこれで素晴らしいのですが、CGによって失われたものも多いことは『フック』と『プーと大人になった僕』を見比べるとわかるかもしれません。
以上、1991年公開の映画『フック』ネタバレ考察でした!