2023年6月9日公開の実写版『リトル・マーメイド』のネタバレ考察です。
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ディズニー100周年の目玉企画にして、公開前から騒がれまくりのあの作品がついに…!!
先にお伝えしますが、私は実写版『リトル・マーメイド』については、大変楽しめました!
元々好意的な気持ちで観ると決めていたのもありますが、実際に観ても期待を裏切られることはありませんでした。
しかし、気になった部分はもちろんあるので、全てまるっとネタバレ考察していきます。
目次
オープニングに隠された意図
まずは『リトル・マーメイド』のあらすじを引用します。
美しい歌声をもち、人間の世界に憧れている人魚アリエル。掟によって禁じられているにも関わらず、ある日彼女は人間の世界に近づき、嵐に遭った王子エリックを救う。この運命の出会いによって、人間の世界に飛び出したいというアリエルの思いは、もはや抑えきれなくなる。そんな彼女に海の魔女アースラが近づき、恐ろしい取引を申し出る。それは、3日間だけ人間の姿になれる代わりに、世界で最も美しい声をアースラに差し出すことだった…。
実写『リトル・マーメイド』|映画|ディズニー公式
大筋は1989年のアニメ版『リトル・マーメイド』と同じです。
話の流れもほぼ同じなので、アニメ版のファンが観たい名シーンの数々も確認できるはず。
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セバスチャンが城のシェフから逃げ回るシーンはカットされていたけど…
個人的にまず最初に感動したのが、オープニングの海の底の描写です。
アニメ版『リトル・マーメイド』では、2Dアニメということもあり海の中の描写は少し暗い印象でした。
オープニングでカメラがどんどん海の底に沈んでいくシーンでは、色鮮やかな海の生き物たちが登場します。
実写版だとそれがより明るく鮮明に描かれており、BGMに流れる『Part of Your World』とマッチして最高の演出に。
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私はこのシーンで思わず泣いてしまいました
そしてこれは原作者の意図も含んでいるのではないかと考えています。
映画の冒頭で引用されるのは、『人魚姫』の原作者ハンス・クリスチャン・アンデルセンの言葉。
「But a mermaid has no tears, and therefore she suffers so much more.
(人魚は涙を流せない、だから彼女は余計に辛かった)」
人魚は海の中にいるので、涙を流しても物理的に見えないから?とも考えました。
そうだとすると実写版『リトル・マーメイド』のオープニングで描写される煌びやかな海の底の世界が、途端に物悲しい虚構の世界のようにも見えてきます。
またアンデルセンの言葉を引用したのは、別の意味も考えられます。
それは原作『人魚姫』では、言葉通り「人魚は涙を流さない」という設定があり、主人公の人魚姫は何度も悲しい気持ちを抱くものの、「涙を流すことはない」のです。
そして物語のラスト、恋が叶わず海の泡となった人魚姫が風の精に姿を変え、そこで初めて涙を流します。
原作では「人魚から風の精に生まれ変わること」🟰「他者(王子)の幸せを願えるようになったこと」。
涙とは精神的に成長することで初めて得られるものという位置付けです。
では実写版『リトル・マーメイド』では、涙にはどんな意味があったのか。
実写版ではアリエルに限らず、トリトン王やエリックなど主要なキャラクターが涙ぐむ場面はありますが、明確に涙を流しているシーンはありませんでした。
ただ涙ぐむ場面はいずれも物語のラスト近くですので、どのキャラクターもその時点で精神的に成長したことが表されているようにも考えられます。
- 自分が独りではないと知ったアリエル
- 子を縛るのではなく、自由にさせるべきだと決意するトリトン王
- 好奇心のままに生きるのではなく、自分に与えられた責務を果たそうとするエリック
アニメ版でも使われなかった原作者の言葉を、わざわざ冒頭で引用したのは、キャラクターの「涙」に注目して観てほしいという明確な注意喚起かもしれません。
「共生」を描いた理由
実写版『リトル・マーメイド』ではキャラクターの家族設定も複雑になっていました。
アリエルとエリックの両サイドでチェックします。
アリエルは7人姉妹の末っ子という設定。
アニメ版では全員「A」から始まる名前でした。
一方実写版では姉妹は「七つの海の守護者」という設定で、名前も世界の海の名前に由来するものになっています。
また人種も守護する海に合わせた設定になっているようでした。
「コーラルムーン」と呼ばれる決められたタイミングで王と姉妹は集まります。
この時期以外は顔を合わすことはない様子。
実写版でも、アリエルを含め姉妹たちはトリトン王を「お父様」と呼んでいましたが、これは血縁としての「父」ではなく、組織のトップを「親父」と呼ぶ感覚に近いかもしれません。
ちなみに「お母様」はすでに亡くなっている設定で、人間に殺されたという死因はアニメ版と同じです。
また海の魔女アースラは、アリエルの叔母という設定で、これはミュージカル版や小説版とほぼ同じ。(ミュージカル版、小説版は「伯母」の設定)
アニメ版ではエリックの血縁は登場せず、執事のグリムズビーが世話役といった印象。
劇中で結婚式のシーンが2回もあるにも関わらず、王や王妃の姿はありません。
一方実写版では、王妃が登場。
エリックは沈没船から助け出された孤児で、王と王妃に実子同然に育てられたという設定。
王はすでに亡くなっており、国を治めているのは王妃。
浮つくエリックに外出禁止令を出したりと、普通に厳しいお母さんでした。
王が亡くなっていることもあり、なぜか執事のグリムズビーと王妃の距離感がとても近く感じました。もしかして…?
誰も悲しまない設定なので、お幸せに…と願います。
実写版『リトル・マーメイド』では、アニメ版では描かれなかったエリック側の環境や心情も丁寧に描かれていました。
実子ではないが故の、複雑な親子関係も、エリックの放浪癖を助長していたのかもしれないと感じさせる内容です。
またアリエル側・エリック側の双方で国を憂う状況も描写し、人魚 対 人間の構図もわかりやすく描かれました。
人魚 | 人間 |
---|---|
沈没船が海の環境を荒らす | 神(人魚)の怒りで海が荒れ船が沈没する |
人間が人魚を殺す | 海が荒れるせいで街が衰退する |
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両成敗な内容のように感じますが…
アニメ版『リトル・マーメイド』の考察記事でも書きましたが、人魚が海面に近づくと海が荒れるというのは世界中でのあるある設定。
アニメ版ではラストでアリエルがエリックと結婚することで、人魚の世界とは今生の別のように描かれましたが、実写版ではどちらも行き来できるようでした。
所謂「嫁ぐ」という前時代的な感覚ではなく、「共生」というイメージです。
「共生」は先に紹介した両家の家族設定にも表れていると考えられます。
血縁ではない者同士が「共」に「生」きるということです。
そもそも実写版ではラストシーンでも、アリエルとエリックが結婚したという説明はなく、2人は未知の海域を目指して旅立つということになっています。
ayumi14
アリエルのお姉さんたちが七つの海の守護者だから、そもそもアリエルにとって未知の海域じゃないのでは…???
ちなみにアリエルが守護しているのはカリブ海です。
これからはエリックと共にカリブ海を守護していくという伏線も込められていたのでしょうか。
リアルすぎるキャラクター
公開前から話題になっていた実写版のキャラクター。
特にセバスチャン、フランダー、スカットルのリアルすぎるヴィジュアルは物議を醸していました。
ayumi14
正直最初見た時は「!?」って思いましたよね…
ただ実際に作品を観始めると、セリフや歌もあり、物語に溶け込んでいるため、そこまで違和感はありませんでした。
アニメ版と比較すると、表情がないのが少し残念ですが、そのあたりは脳内で補完するしかないかなと。。。
実写版『リトル・マーメイド』では、新曲もいくつかあり、個人的にはスカットルが歌う『The Scuttlebutt』がとても好きでした。
作詞リン=マニュエル・ミランダ、作曲アラン・メンケンという最強タッグ!
このラップのフレーズは、まさしくリン節炸裂といったファンには心躍るシーンでした。
また実写版で執事長に変更されたセバスチャンが突如歌い出す名曲『Under the Sea』は、逆に実写版の方がリアルすぎて華やかさに欠ける印象。
これに関しては、アニメ版の音楽家というセバスチャンの設定の方がイキイキしていて良かったと感じます。
セバスチャンのストーリーへの絡み方を考えると、執事長の方がしっくりくるのは確かなのですが…
フランダーに関しては、アニメ版ではマスコット要員だったのに、実写版ではリアルすぎてマスコットにはなれなかったため、全体的に影が薄くなってしまっていました。
ただこの3人のキャラクターに関しては、実写化する以上、こういう表現になるのは仕方ないですし、精一杯善処しているのだと思います。
アリエル役のハリー・ベイリーも、配役が決定してから散々騒がれてきましたが、前評判通り歌声は最高でした。
個人的には話し声もとてもキュートで、アリエルのイメージにピッタリだと感じます。
ただ、これは演出の意図なのか彼女のクセなのかわかりませんが、ガチの表情になっているシーンが多く、とにかく決意の固いアリエルという印象。
アニメ版ではちょっと間抜けでヘラヘラしている少女らしい一面もありましたが、実写版ではとにかくガチ!絶対あなたの世界へ行く!!という意志がメラメラ燃えているようでした。
アニメ版が1989年で、すでに30年以上前の作品ですから、女性の描き方が時代と共に変わったという流れもあるのでしょう。
ayumi14
個人的にはアマプラ版『シンデレラ』に似ている気もしました!
ヴィジュアルが気になって、感情移入できないという方には2時間15分は長いかもしれません。
しかし個人的には始まって5分で心を奪われて泣いてしまったくらいなので、少しでも興味があればぜひ観てもらいたい作品です。
以上、2023年6月9日公開の実写版『リトル・マーメイド』のネタバレ考察でした。