【ネタバレ注意】実写ピノキオもマルチバースする時代

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2022年9月8日にディズニープラスで配信開始された、実写版『ピノキオ』のネタバレ考察です。

風変わりなおじいさんゼペットは息子を亡くし、「もう一度息子に会いたい…」と思い続けながら一人孤独に暮らしていた。そんなある晩、ゼペットが作った木彫りの人形ピノキオに、妖精ブルー・フェアリーが魔法をかけ命を授ける。ピノキオに命が宿り驚くゼペットと、学校に通い“本当の人間の子”になるため奮闘するピノキオ。ジミニー・クリケットはそんなピノキオに善悪を教えながら導いていこうとするが、純真無垢なピノキオにあらゆる誘惑や試練が襲い掛かる。「ゼペットの息子になりたい」という願いを叶えるため、ピノキオは困難が待ち受ける大冒険に出かけるのだが…。

実写映画『ピノキオ』公式サイト|ディズニープラス
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予告が公開された時点で大荒れの予感でしたが…

ここからはネタバレありですので、未視聴の方はご注意下さい。

早速考察して参ります。

動画でサクッと観たい方はこちら!

ジミニーは信頼できる語り手なのか

今回の実写版『ピノキオ』はアニメ版から大きく改変することなく、むしろリスペクトを感じさせる作品になっています。

たとえば冒頭でジミニー・クリケットが語り手となり、視聴者にピノキオの物語を読んで聞かせるという展開をきちんと踏襲。

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ディズニー・クラシック伝統の「本を開く」描写がなかったのが少し残念でしたが…

語り手スタイルは同じですが、「物語」の中のジミニーと「語り手」のジミニーが会話をするシーンがある点は微妙に異なります。

そしてこの会話から、ジミニーについてとある疑問が芽生えました。

果たしてジミニーは「信頼できる語り手」なのか?

そもそも「信頼できる語り手」とは何なのか、ここでは対義語の「信頼できない語り手」について引用します。

信頼できない語り手(しんらいできないかたりて、英語: Unreliable narrator)は、小説や映画などで物語を進める手法の一つ(叙述トリックの一種)で、語り手(ナレーター、語り部)の信頼性を著しく低いものにすることにより、読者や観客を惑わせたりミスリードしたりするものである。

信頼できない語り手-Wikipedia

つまり、ジミニーはこの「信頼できない語り手」なのではないか?と感じたのです。

©︎Disney

実写版『ピノキオ』でのジミニーのセリフを抜粋します。

ブルー・フェアリー「あなたは?
ジミニー・クリケット「ジミニー・クリケットです 虫 小粋なコオロギ ダンディな風来坊

ブルー・フェアリー「いいことと悪いことの区別はつく?
ジミニー・クリケット「それはもうバッチリ こんな心がけのいい昆虫そうそういない 過去はどうあれね

このセリフからも伝わりますが、実写版『ピノキオ』のジミニーはアニメ版より俗っぽく、ブルー・フェアリーにもタメ口です。

そして「風来坊」を自称するように、気まぐれにそのひぐらしで生きています。

一般的な“良心”のイメージからはちょっと遠い、チャランポランな人物とも取れる自己紹介です。

冒頭で物語のジミニーと語り手のジミニーが会話をする時、「全てを経験した上で語りを任されているからさ」というセリフがあります。

語り手、つまり物語の主観的立場にいるジミニーは、過去(=物語)の自分よりもとても賢いと言うのです。

確かに生きている年数分、経験値も増えているので賢いのは間違いありませんが、ジミニーはあくまでピノキオの“仮”の良心だっただけ。

賢くなったのはピノキオであって、ジミニーではありません。

そこを誤解していることからも、ジミニーは「信頼できない語り手」であり、つまりこの実写版『ピノキオ』の物語は、ジミニー本人も意図しないところで趣旨の異なる物語になっている可能性があります。

キーワードは“足”

実写版『ピノキオ』では“足”が重要なキーワードです。

  • ゼペット「かっこいい木靴 作ってやるぞ
  • ストロンボリ劇団の人形サビーナを見てピノキオ「脚がとっても強そう
  • 人形使いのファビアナは脚が悪い
  • ストロンボリは足で小銭を集める
  • モンストロの腹の中でピノキオは自分の足を使い火を起こす
  • モンストロから逃げる時はピノキオのバタ足をエンジン代わりにする

劇中で、脚は良いことにも悪いことにも使われています。

これはイタリアのことわざが関係あるのではないかと、個人的には思いました。

Chi viaggia con le scarpe d’oro, può arrivare sino alla fine del mondo.
黄金の靴で旅する者は、世界の果てまで行きつける。

よく使われる「良い靴が良い場所へ連れて行ってくれる」という意味のことわざです。

実写版『ピノキオ』の舞台はイタリアの古都シエナ。

現地の史観に基づいた設定を織り込むことは十分考えられます。

©️Disney

このことわざ通り、キャラクターたちは収まるところに収まります。

ゼペットの作った良い木靴を履いたピノキオは、家族と幸せな暮らしを。

脚の障害にも負けず芸を磨いたファビアナは仲間たちと新しい劇団を創設。

足で小銭をかき集めていたストロンボリは牢へ。

そしてラストではピノキオの立派な木靴がアップで映し出されます。

物語の隠れたメッセージとも言えるかもしれません。

ここでもマルチバース

アニメ版のラストでは、ゼペットを助けようとして身代わりになったピノキオが、本物の子どもになることで生き返ります。

©️Disney

しかし実写版では、ゼペットもピノキオも死にません。

モンストロから逃れ、命からがら生き残ったゼペットはピノキオにこう語りかけます。

お前はもうとっくに わたしの本当の子どもだ
そのままのお前がいいんだ 何一つ変わってほしくない

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エンディングが変わったから慰めているわけじゃないよね…?

その後すかさずジミニーの語りが入り、「ピノキオが人間の子どもになったと言う話もあるが本当かどうかはわかりません」と言って物語は終わります。

そう、ピノキオもマルチバースする時代です。

ピノキオが木のままの世界、子どもになった世界、ストロンボリ劇団で各地を巡業する世界、プレジャーアイランドでロバになった世界…

実はいくらでもマルチバースできるのがピノキオの物語です。

そして冒頭でジミニーが「信頼できない語り手」だと言ったのも、ここに原因があります。

つまり語り手本人も「ピノキオが子どもになった世界」と、そうじゃない世界のどちらも知っているからこそ、どこまでが自分が見聞きした物語なのか、半信半疑のまま語っている節があるのです。

冒頭で「ずいぶんと昔の話なんですが」と言いますが、そもそもコオロギの寿命は1年。

恐らく、“仮”の良心としての役目が終わり、“語り手”という新しい役目をブルー・フェアリーにもらう際に、不死の存在にしてもらったのでしょう。

それか、映画のラストで全員モンストロに食われて死んでしまっていて、霊体となったジミニーが回想する形で物語が繰り返されているか。(俗に言う「火垂るの墓」方式)

というかお気づきの方も多いでしょうが、ラストは青い光の射す方へピノキオとゼペットたちが歩き出すシーンなので、光の先にブルー・フェアリーが待っていて、願いを叶えてくれたかもと思わせるような演出でした。

いずれにしても今回の『ピノキオ』に関しては、ピノキオ自体がとても健気で可愛らしく、冒険の中で得た様々な学びをきちんと実践できるレベルにまで昇華し成長していたので、本物の子どもにならなくても問題ないと個人的には感じました。

アニメ版のピノキオは、とにかく子どもっぽく愚かで単純すぎてあまり好きになれなかったのでですが、今回の実写版のピノキオはとても好きです。


公開前から話題だったブルー・フェアリーの改変についてですが…

©️Disney

アニメ版より出番は少なく、なんだか事務的であっさりした印象でした。

アルカイックスマイルを出すこともなく、ピノキオとジミニーに使命を与えてさっさと去る。

物語全体のキャラや作りがとても良かったので、ブルー・フェアリーのことはあまり気になりませんでしたね。

むしろ正直ジョンを演じたとろサーモンの村田さんがとても上手くてそちらの方が印象に残っています。

©️Disney

アニメ版の正直ジョンは、ルパン三世の声優としておなじみの山田康雄さんが演じています。

山田さんほど(良い意味で)強い癖はないものの、歌もセリフも抑揚が自然で上手くて驚きました。

未見の方は是非、ディズニープラスで視聴してみてください。


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