ひとりぼっちのガストン~美女と野獣考察~

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ayumi

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今回は『リトル・マーメイド』に続く、ディズニールネサンス第2作のこちらの作品を考察します。

『美女と野獣』(びじょとやじゅう、原題: Beauty and the Beast )は、フランスの民話『美女と野獣』(J・L・ド・ボーモン夫人版)を元に1991年に制作されたディズニーの長編アニメーション映画作品である。日本での公開は1992年9月23日。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%BE%8E%E5%A5%B3%E3%81%A8%E9%87%8E%E7%8D%A3_(1991%E5%B9%B4%E3%81%AE%E6%98%A0%E7%94%BB)

エマ・ワトソンがベルを演じた実写映画の成功も記憶に新しい作品です。

日本では1993年9月17日にブエナ ビスタ ジャパンからビデオが発売された。日本で初めて、セルビデオ(販売用ビデオテープ)のみで100万本を出荷した作品となった。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%BE%8E%E5%A5%B3%E3%81%A8%E9%87%8E%E7%8D%A3_(1991%E5%B9%B4%E3%81%AE%E6%98%A0%E7%94%BB)

我が家はリアルタイムでこのVHSを持っていました。ですが、残念なことに、観た記憶はほとんどありません。当時5歳の私、何を考えていたんでしょうね。

今回の考察は、大人になってから観たアニメーション映画『美女と野獣』と、講談社KK文庫『ディズニー みんなが知らない美女と野獣 なぜ王子は呪いをかけられたのか』、ディズニープラスで配信中のドキュメンタリー『ハワード – ディズニー音楽に込めた物語』を基に執筆します。

伝統的なプロローグと新進的なヒロイン

『美女と野獣』のプロローグは森の中にそびえたつ城、つまり野獣の屋敷から始まります。ステンドグラスで、野獣が野獣になってしまった経緯が語られ、視聴者を物語の世界に引き込んでいきます。

この描写実は、プロローグの時点で、時間軸は既にハッピーエンドを迎えた後です。

物語のエンディングでは、全ての呪いが解けてハッピーエンド、という内容のステンドグラスが出てきます。つまり野獣(元の名はアダム)が、ベルと結ばれた後に、二人の馴れ初めを模したステンドグラスを作らせたのです。
冒頭でアダムに呪いをかけた老女が、ステンドグラスの中では野獣の姿ソックリなのも、醜かった自分の姿を投影しているからではないでしょうか。

このようなプロローグはディズニーの伝統です。例えば『シンデレラ』も、『Cinderella』と表紙に書かれた立派な本をめくるシーンから始まり、最後はシンデレラと王子様が馬車の中でキスをしたシーンで本は閉じられます。

近年では『塔の上のラプンツェル』でも、ヒーロー役のユージーンが視聴者に向かって語りかけるプロローグが印象的です。

つまりディズニープリンセスの映画は、披露宴で流れる新郎新婦のプロフィールムービーと同じ感覚で観ると良いのです。

幸せのその時に、登場人物すべてを招いて惚気たいのは、現実でも物語でも同じなのです。

野獣のナルシシズム

「赤いバラが枯れるまでに愛し愛されること」が呪いを解く条件。野獣の住まう西の塔には、ガラスのケースに入れられた赤いバラが置いてあります。

この赤いバラ、ラストシーンに出てくるベルとアダム(野獣)が踊るステンドグラスにも象徴的に描かれています。
このステンドグラスは先述したように、アダムが作らせたものです。

ステンドグラス、赤いバラと来れば、キリスト教的見方からは切っても切り離せません。

教会を彩るステンドグラスは、聖書の物語が表現されています。それは識字率がもっと低かった中世の時代、聖書が読めない人たちのために、視覚的に聖書の物語を伝えるために作られました。

そして赤いバラは、「殉教」「愛」「キリストの受難」を表します。

つまりエンディングのステンドグラスを作らせたアダム(野獣)は、自分をキリストに譬え、一連の出来事を「自らの受難」として描かせたのです。

アダムと言えば旧約聖書に出てくる楽園追放のエピソードが有名です。知恵の実を食べて、イヴと共に楽園を追い出されてしまうというストーリーです。
『美女と野獣』に出てくるアダムも同様に、両親はいないながらも、使用人たちに甘やかされワガママに何不自由ない暮らしをしていました。ところが突然呪いにより“楽園”はなくなり、長い苦難の日々を送ることになります。

この『美女と野獣』における楽園追放のエピソード、実際に物語を動かしているのはアダムではなく、ベルとガストンです。詳細は後述します。

わざわざステンドグラスまで作ってお披露目しているのに、実は自分は巻き込まれるままだったなんて、滑稽ですね。

ガストンとマイノリティ

『美女と野獣』製作総指揮はハワード・アッシュマンです。ハワードは作詞家で、旧知の仲だった作曲家アラン・メンケンをディズニーに連れて来た人物とも言われています。

ハワードについて語られるとき、避けて通れないのが、マイノリティと『美女と野獣』の関係性についてです。

ハワードは同性愛者でした。1991年に『美女と野獣』の完成を見ることなく、エイズで死去しています。享年40歳。同年11月にはQUEENのフレディ・マーキュリーもエイズで亡くなっており、彼もまた同性愛者だったことは広く知られています。
ハワードは亡くなる直前まで自身がエイズであることを仕事仲間に隠していました。
それは子どもたちが観るものを作っている自分が同性愛者だと知られたら、ディズニーから追い出されるのではないかと思ったからです。
90年代はまだエイズの特効薬もなく、現在よりもマイノリティへの偏見が満ち溢れていた時代でした。

『美女と野獣』の劇中で、ガストンが村の人々を焚きつけて野獣の屋敷を夜襲するシーンがあります。何のいわれもないのに民衆に敵意を向けられる野獣に、ハワードは自身を重ね合わせたと評論されることもあります。

しかし実際は逆です。
ガストンこそがマイノリティ、野獣こそがマジョリティの象徴です。

アニメーション映画『美女と野獣』では多くは語られませんが、ガストンは王子であるアダム(野獣)の幼馴染で、後にアダムから領地まで分け与えられています。
アダムが使用人に甘やかされ、ワガママに振舞おうと、明るくそれに付き合う良い悪友といった立ち位置でした。
それが魔女に呪いをかけられたことで、アダムもガストンも互いのことを忘れてしまい、そのうちにベルが現れ、結果的には野獣(アダム)がガストンを塔から突き落としてしまいます。

ガストンが先導する夜襲のシーン、これはつまり革命。マイノリティが立ち上がる様子を表しています。

日本語訳では『夜襲の歌』ですが原題は『THE MOB SONG』、mobには『下層民』という意味もあります。ハワードがこのシーンに込めた意味を考えるとき、自らの死を目の前にして奮い立つ想いを感じずにはいられません。

ネタバレの順番を反省する

今回、この記事を書く前に先述の講談社KK文庫『ディズニー みんなが知らない美女と野獣 なぜ王子は呪いをかけられたのか』を読みました。このシリーズ、内容がとても面白いので、読書が苦手な私でも1時間半ほどであっという間に読んでしまいます。

ayumi14

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ただ、裏側ネタバレしすぎて考察が浅くなってしまう!

そこが面白いのですが。

読む前に記事を書いていたら、もっと違った見方が出来たかもと思ってしまいます……

逆にディズニープラスで配信中のドキュメンタリー『ハワード – ディズニー音楽に込めた物語』は、たまたま空いた時間で観たのですが、こちらは大きなインスピレーションになりました。

このドキュメンタリーを観てから、ハワードが携わった楽曲が無性にピアノで弾きたくなり、実際に『Part of your world』や『Beauty and the Beast』を弾いてみました。
ハワードの気持ちとシンクロして(?)切なくなりすぎました。

まさに、ひとりぼっちの発表会でした。

以上、『ひとりぼっちのガストン~美女と野獣考察~』でした。

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