『Let It Go』ですでに続編ネタバレしていた!?ディズニーソングで比較文化#1

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ayumi

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ディズニー映画に欠かせない、数々の名曲たち。

字幕派と吹替派で、口ずさむ歌詞は違ってくるかもしれませんね。

ayumi14

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子どもの頃吹き替えで観ていたけど、大人になって字幕で観ると歌詞が新鮮だったりしますね~

この違いに関して、SNSである投稿を見つけました。

確かに、『仕事が好き』って、少々違和感のある歌詞ですね。

ドワーフたちがイキイキと仕事をしているので、あまり深く考えたことはありませんでしたが、気になりだすと止まりません。

というわけで、今回から不定期でこのシリーズを投稿します。

基本は英語(もしくは原語)と日本語の比較です。

20歳まで学校教育でのみ英語を学んだ私のつたない語学力で考察して参りますので、もし+αでお気づきの点がある方は是非ご連絡下さい!

自嘲的/マイルド

今回は『アナと雪の女王』(2013)の主題歌『Let It Go』を考察します。

『2』では黒歴史化されているかつてのエルサ
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流行時、全く興味がなかった私でも「少しも寒くないわ」はネタ的によく使っていました……笑

第86回アカデミー賞歌曲賞受賞、第71回ゴールデングローブ賞主題歌賞ノミネート他、各国で様々な賞を受賞した00年代以降のディズニーソングを代表すると言っても過言ではない名曲です。

ここからは英語/直訳/日本語の順で紹介していきます。

The snow glows white on the mountain tonight
Not a footprint to be seen
A kingdom of isolation
And it looks like I’m the Queen

『Let It Go』Robert Lopez,Kristen Anderson-Lopez

今夜、雪は山に降り積もり
足跡は残らない
孤立した王国、
そして私はそこの女王のよう

降り始めた雪は 足跡を消して
真っ白な世界に 一人の私

『Let It Go』日本語訳:高橋 知伽江

冒頭からエルサの詩的で自嘲的な自分語りが始まります。

しかし、日本語は英語よりもマイルドな表現になっているのではないでしょうか。

英語から漂う悲壮感は、日本語では少し和らいでいます。

“the Queen”は実際に戴冠した女王としての自分ではなく、子どもの“ごっこ遊び”の中の女王のようだという自虐です。


The wind is howling like this swirling storm inside
Couldn’t keep it in, heaven knows I tried

『Let It Go』Robert Lopez,Kristen Anderson-Lopez

風はまるで渦巻く嵐のよう
このままじゃいられない
神様だけが私の努力を知っている

風が心に ささやくの
このままじゃ だめなんだと

『Let It Go』日本語訳:高橋 知伽江

英語では「渦巻く嵐」なのに、日本語では「ささやく」と対照的な表現です。

日本ではあまりピンとこない「神(heaven)」というワードを上手くスルーして、エルサの心情を表しています。

「神様だけが私の努力を知っている」には、エルサの長女&女王としての自覚と努力が込められていて、アナのように両親に上手に甘えることが出来ず、孤独に過ごした幼少期を悔いているようです。


Don’t let them in
Don’t let them see
Be the good girl you always have to be
Conceal, don’t feel, don’t let them know
Well, now they know

『Let It Go』Robert Lopez,Kristen Anderson-Lopez

入れてはだめ
見られてはだめ
今までそうだったように、良い子でいなくちゃ
隠して、勘づかれず、知られずに
あぁ、知られてしまったけど

とまどい 傷つき
誰にも 打ち明けずに 悩んでた 
それももう やめよう

『Let It Go』日本語訳:高橋 知伽江

「Don’t let them in~」からは、「良い子でいなさい」と親から言い聞かせられたことを思い返しながら歌っているようなポーズを取ります。

「こんなに頑張っていたのに結局みんなに知られてしまった」という現在の状況を振り返るエルサ。

日本語だと単語数が少ない分、エルサの苦労が少し和らいでしまうので、このあたりから曲全体の印象が大きく分かれていきます。

「Well,now they know」で何よりも大事にしていた手袋を脱ぎ捨てる一瞬、怒りの表情を見せるところにも注目です。

エルサとアナはそっくり姉妹だった?

Let it go, let it go
Can’t hold it back anymore
Let it go, let it go
Turn away and slam the door

『Let It Go』Robert Lopez,Kristen Anderson-Lopez

なるようになれ、なるようになれ
これ以上抱えていられない
なるようになれ、なるようになれ
背を向けて、ドアをバタンと閉めて

ありのままの 姿見せるのよ
ありのままの 自分になるの

『Let It Go』日本語訳:高橋 知伽江

「ありのままの」とは「実際にあるとおり。偽りのない姿。ありてい。デジタル大辞泉)」という意味。

一方の「Let it go」は「なるようになれ」なので、自暴自棄に近い意味です。

間に挟まれる歌詞からもわかるように、とにかく全てを投げだしてしまいたい、背負っているものを下して楽になりたいという心境が英語からは伝わりますが、日本語では様々な意味できれいにまとまっています。

また1回目の「Let it go」を歌うとき、エルサは魔法を使って雪の結晶を出しますが、これは初めて自分の意志で使った魔法です。

一瞬、「ちゃんと思ったような魔法が使えるだろうか」という不安な表情を見せるものの、その後はどんどん調子に乗ってオラフを作ったり、雪を降らせたりします。


I don’t care what they’re going to say
Let the storm rage on
The cold never bothered me anyway

『Let It Go』Robert Lopez,Kristen Anderson-Lopez

彼らが何を言おうと 気にしない
嵐よ 怒りのままに吹き荒れろ
寒さはもう私を煩わせない

何も怖くない
風よ 吹け
少しも寒くないわ

『Let It Go』日本語訳:高橋 知伽江

英語では度々「they」という単語が出てきます。

これはエルサが幼少期からずっと「彼ら=周囲の人間」を意識しながら生きてきたことの表れです。

「The cold never bothered me anyway」と歌うときの晴れ晴れとした表情からもわかる通り、ここで「周りが望むような良い子を演じること」に決別しています。


It’s funny how some distance makes everything seem small
And the fears that once controlled me
Can’t get to me at all

『Let It Go』Robert Lopez,Kristen Anderson-Lopez

離れてみることで何もかもがちっぽけに思えるなんて滑稽
恐れが私を支配していた
私を少しもくじけさせることはない

悩んでたことが うそみたいね
だってもう自由よ
なんでもできる

『Let It Go』日本語訳:高橋 知伽江

このフレーズのエルサは、解放感たっぷりです。

「なんてちっぽけな世界にいたんだろう」と気付くと、自分の未来にワクワクして、表情がアナそっくりになっています。

エルサとアナは『2』まで含めて、見た目も性格も全然似てないと思っていたのですが、このシーンは表情も仕草もそっくりです。

もしエルサが魔法の使えない普通の女の子だったら、案外2人はそっくりの仲良し姉妹として成長していたのではないかと思わせます。


It’s time to see what I can do
To test the limits and break through
No right, no wrong, no rules for me
I’m free

『Let It Go』Robert Lopez,Kristen Anderson-Lopez

私に何が出来るのか今こそ見てみよう
限界を試して、突破しよう
正義も、過ちも、ルールも私にはない
私は自由

どこまでやれるか 
自分を試したいの
そうよ変わるのよ 私

『Let It Go』日本語訳:高橋 知伽江

ここのポイントは「自由≒変化」です。

英語では「自分の力を試すこと」が「自由」であるという流れですが、日本語だと「自分の力を試すこと」は「変化」と表現されています。

「自由」だと楽しいイメージですが、「変化」だと試練感が強いですね。

『アナ雪2』を暗示するフレーズ

Let it go, let it go
I am one with the wind and sky
Let it go, let it go
You’ll never see me cry

『Let It Go』Robert Lopez,Kristen Anderson-Lopez

なるようになれ、なるようになれ
風と空とひとつになる
なるようになれ、なるようになれ
もう泣き顔を見せることもない

ありのままで 空へ風に乗って
ありのままで飛び出してみるの

『Let It Go』日本語訳:高橋 知伽江

「the wind and sky」という単語から連想するのは、『2』で出てきた精霊たちのこと。

精霊は「風」「火」「水」「大地」「氷」がいて、実はエルサは「氷」の精霊だったというストーリーでした。

実はこの歌の時点で、すでにエルサは自然に精霊を使役することが出来たことがわかりますね。


Here I stand
And here I’ll stay
Let the storm rage on

『Let It Go』Robert Lopez,Kristen Anderson-Lopez

私はここに立っている
そしてここに居続ける
嵐よ 怒りのままに吹き荒れろ

二度と涙は 流さないわ

『Let It Go』日本語訳:高橋 知伽江

単純に単語数の違いに驚かされるフレーズです。

英語では「涙」という単語は使われていませんが、この単語数の差を最短で埋めるには、新しい単語を引っ張ってくるしかなかったのかもしれません。


My power flurries through the air into the ground
My soul is spiraling in frozen fractals all around
And one thought crystallizes like an icy blast
I’m never going back, the past is in the past

『Let It Go』Robert Lopez,Kristen Anderson-Lopez

私の力が大地の空気の中を駆け巡り
私の魂はあたり一面の雪の結晶の中で急上昇する
想いはアイスブラストのように結晶化する
絶対に戻らない、過去は過去の中に

冷たく大地を包み込み
高く舞い上がる思い出描いて
花咲く氷の結晶のように
輝いていたい
もう決めたの

『Let It Go』日本語訳:高橋 知伽江

説明的な歌詞が続きます。

この部分でもわかるように、『アナ雪』の段階でエルサは自身と大地や自然との深いつながりを(自覚なく)意識していたようです。

最後のフレーズを歌いあげながら、何かを決断したかのように髪飾りを放り投げるのですが、その表情は一瞬まるでヴィランのようになります。

元々、『アナと雪の女王』の原作アンデルセンの『雪の女王』では、雪の女王は主人公の友達をさらってしまう役柄。

またプロジェクトの当初は、エルサはヴィラン設定の予定だったこともドキュメンタリーで明かされています。

『アナ雪』シリーズを通して、エルサの一番の見せ場でもあるこの『Let It Go』は、エルサの人格が行ったり来たりする、とても複雑な歌なのです。


Let it go, let it go
And I’ll rise like the break of dawn
Let it go, let it go
That perfect girl is gone

『Let It Go』Robert Lopez,Kristen Anderson-Lopez

なるようになれ、なるようになれ
夜明けのように私は舞い上がる
なるようになれ、なるようになれ
完璧な女の子は去ってしまった

これでいいの 
自分を好きになって
これでいいの
自分を信じて

『Let It Go』日本語訳:高橋 知伽江

ここも英語と日本語では全く意味の違う歌詞です。

メロディーが明るいのでわかりづらいですが、英語の歌詞ではエルサは完全に自暴自棄になっています。

優等生だった女の子が、ふとしたことをキッカケに急にギャル化してしまう時のようです。(ギャルは好きです)

一方の日本語では、かなり意訳をしています。

自暴自棄と言うよりは、自分自身に「これが正しい道」と言い聞かせる、まだ優等生としての自分を捨てきれていない様子です。


Here I stand
In the light of day
Let the storm rage on
The cold never bothered me anyway

『Let It Go』Robert Lopez,Kristen Anderson-Lopez

私はここに立っている
輝かしい日の中に
嵐よ 怒りのままに吹き荒れろ
寒さはもう私を煩わせない

光 浴びながら
歩き出そう
少しも寒くないわ

『Let It Go』日本語訳:高橋 知伽江

やはり英語だと単語数が多い分、とてもポエトリーです。

ラストのフレーズに来て、エルサはいよいよ威風堂々と言った様子。

英語は心象を説明する描写が多く、説明的ですが、日本語は単語数が少ない分、イメージをかきたてる内容になっています。


以上、フレーズの比較でした。

あらためて感じるのは、メロディーに乗せたときの英語と日本語の単語数の違いです。

日本語の方が圧倒的に少ない中で、大きく世界観は崩さずに翻訳するのは、大変…というよりもセンスとキャラクターへの理解が不可欠でしょう。

今回のように歌詞だけを和英比較すると、エルサというキャラクターが全く違う性格に感じます。

しかし映画全編を通してキャラクターを観ているので、どの言語で観ても、違和感を感じることはないはずです。

だからこそ、劇中の1曲に注目して意味を比較すると意外な発見があるかもしれませんね。

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『トイストーリー3』でスペイン語モードのバズは性格が変わるという設定がありましたが……笑

大変勉強になるので、このシリーズは続けていきます。

以上、『『Let It Go』ですでに続編ネタバレしていた!?ディズニーソングで比較文化#1』でした。

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『アラジン』は一生で一番多く観た映画になる予定。
ディズニーとスターウォーズ界隈を行ったり来たりしています。
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