ディズニー考察に欠かせない不安だらけの『オズの魔法使い』

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ayumi

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ディズニールネサンス育ち。
『アラジン』は一生で一番多く観た映画になる予定。
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『オズの魔法使い』と聞いて、大半の方はレジェンド的ミュージカル映画『オズの魔法使』をイメージするでしょう。

1939年(!!)製作

しかしオズに関する映画は他にも数多く作られており、もちろんディズニーも製作しています。

今回はディズニー製作のオズ作品が1939年のMGMの作品より、ポピュラーになれないのはなぜなのか?

私観ではありますが、深掘りしていきます。

動画でサクッと見たい方はこちら。

ディズニーが外した2つの要素

まずは『オズの魔法使い』の原作のあらすじを引用します。

大たつまきに家ごと運ばれたドロシーは、見知らぬ土地にたどりつき、脳みそのないかかし、心をなくしたブリキのきこり、臆病なライオンと出会う。
故郷カンザスに帰りたいドロシーは、一風変わった仲間たちとどんな願いもかなえてくれるというオズ大王に会うために、エメラルドの都をめざす。
西の悪い魔女は、あの手この手でゆくてを阻もうとするが…。
世界中で愛され続ける名作。

オズの魔法使い(新潮文庫)

これがオズシリーズ1作目『オズの魔法使い』であり、またMGM製作の『オズの魔法使』(1929)あらすじでもあります。

そしてディズニーが製作したカルト的人気映画『Return to OZ』(1986)は、シリーズ続編の『オズの虹の国』『オズのオズマ姫』を軸にしたストーリーで、非公式ではあるものの『オズの魔法使』(1929)の続編ということになっているのです。

ayumi14

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続編だと思って観ると、(良い意味で)後悔すること間違いなしですよ!

VHSのパッケージ

「行こう ドロシー!」って正気か!?と突っ込みたくなるレベルです。

確かに興味は惹きますし、幼少期にこの映画を観たときもこのシーンが一番印象に残っていたのは間違いありませんが、みんなが知ってる『オズの魔法使』とのギャップが大きすぎます。

一方、こちらもディズニー製作の『オズ はじまりの戦い』については、原作シリーズを基にしたオリジナルストーリー。

2013年公開

オズ大魔王誕生のいきさつを描いたファンタジーです。

1986年の教訓なのか、おぞましさで引き付けることもなく、ディズニーらしい夢と魔法のファンタジー映画に仕上がっています。

しかし、この映画にはドロシーが登場しません。

オズの魔法使い=ドロシーだと思っている人が(少なくとも日本では)多いのに対して、この『オズ はじまりの戦い』では若き日のオズと魔女グリンダがキービジュアルになっており、正直違和感が拭えません。

興行的には成功しているものの、1939年を超えるインパクトを与えたとは言えないのです。

やはり世界的に求められている『オズの魔法使い』とは、色とりどりの夢の世界をかわいい女の子が冒険する物語なのでしょう。

ちなみにディズニー製作ではありませんが、ミュージカル原作の映画『The Wiz』(1978)もカルト的人気がありますが、こちらも上記と同じ理由でやはりインパクトは薄いです。

マイケル・ジャクソンのかかし役は好評だったようです

不安要素がクセになる『Return to OZ』

ここからはディズニー製作の2作品についてそれぞれ掘り下げていきます。

まずは1986年公開『Return to OZ』から。

この映画を一言で表すなら【不安】

ドロシーが再び夢の国で、スリリングな冒険を繰り広げる!
エメラルドシティに戻ったドロシーが目にしたのは、石に変えられた住民たちの姿。
彼女は、ティック・トックやジャック、ガンプたち新しい仲間の助けを借り、不気味なホイラーズや、首を集める女王モンビ、そして邪悪なノーム王に立ち向かうことになる…。
果たしてドロシーは、エメラルドシティと友達を救えるのか?

Disney+「オズ」

前述の通り、この映画は1939年『オズの魔法使』の非公式続編という微妙な立ち位置なのですが、共通点があまりにも少ないという点にディズニーの固い意志を感じます。

  • カンザスでの描写がカラー(1939年はカンザスがモノクロ、オズがカラー)
  • ドロシー役が幼い(原作本来の年齢に近い)
  • ミュージカルではない(前作はミュージカル)
  • かかし、木こり、ライオンの作り物感(前作では特殊メイクの人間が演じた)

実は1939年の作品から引用しているのは『ルビーの靴』(原作では『銀の靴』)と、呪文『There’s no place like home.』、カンザスとオズでの登場人物の配役が同じという設定のみです。

オズシリーズ2、3作目を舞台にしているので“続編”と謳っているだけで、実際は“別物”であることを肝に銘じないといけません。

なぜなら、本作の主人公はヴィランズたちだからです。

本作に出てくるヴィランズは以下の通りです。

ホイーラーズ
ノーム王
モンビ王女

画像だけでも夢に出そうですが、是非動いている彼らを観てほしい。

それは正に、目が覚めているのに見える悪夢。

廃墟のエメラルドシティを奇妙な音と共に走りまわるホイーラーズ、ドロシーの仲間が敗れるごとに人間に近づくノーム王、そして生首コレクターのモンビ王女。

本作のヴィランズは手下ポジションも含めて、この3者しかいないのですが、それでも観終わった後に覚えているのはドロシーの大冒険よりもヴィランズの不気味さなのです。

オズシリーズは原作者が出版したものだけでも14作品あり、その全てが1939年の作品のような夢と希望に満ち溢れたものばかりではありません。

しかし世界が期待するオズは1939年のオズなので、本作『Return to OZ』はやはり需要からはかけ離れてしまっていると言わざるを得ません。

実写よりのアニメ『オズ はじまりの戦い』

続けて2013年公開の『オズ はじまりの戦い』について。

この映画を一言で表すなら、【キレイすぎて非現実的】

前作が1986年なので、それから27年が経過し、技術は格段にアップ。

80年代の技術では再現しきれなかったオズの国の様子が、CGでさらに細かく再現出来るようになりました。

オズとグリンダが主役

ただ、この映像美、既視感が強くて、予告の段階でお腹いっぱいに感じてしまいます。

ディズニーカルト部門でおなじみティムバートン監督作品

2010年公開『アリス・イン・ワンダーランド』と似ているからです。

主人公が現実世界から魔法の国に迷い込んで、最終的にその国を救うというプロットまでほぼ同じなので、似てしまうのは仕方ないと言えるでしょう。

1939年の舞台装置×ハリボテ感の良さと、1986年のこだわり過ぎた美術×VFXの良さ、いずれもなくなってしまっているのは否めません。

2013年では、モノクロ→カラーの使い方は1939年を踏襲しています。

また、人物の動きを敢えて影絵のように見せることで、元々オズがカンザスで巡業していた当時のサーカスを想起させるのは効果的です。

そして、何と言っても、サム・ライミ監督お得意のトリッキーなカメラワークは、特に劇場で鑑賞したときにはとても臨場感があったことでしょう。

しかしこのいずれも、『オズ』じゃなくても良い要素なのです。

『アリス・イン・ワンダーランド』に続編が作られたのに、『オズ はじまりの戦い』には続編がないのもその理由だと判断できます。

(公開当初は続編計画はあったものの、2021年現在その進捗は確認されていない。)

『オズ はじまりの戦い』は、ディズニーの実写×CGのファンタジーシリーズの一端を担う作品でしかないのです。


では今後、1939年の『オズの魔法使』を超えるオズの代表作が現われるのかと考えると、答えは『ノー』でしょう。

オズシリーズを語るときにこの作品を無視出来ないのは、アルプスの少女ハイジを語るときに世界名作劇場のアニメ作品を自然とイメージするのと同じです。

偉大で罪深い名作の下に、様々なオズの物語があることもたまには思い出したいものです。

以上、ディズニーと『オズの魔法使』の関係について考察でした!

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