ストレンジ・ワールド大コケから考えるディズニー第三次暗黒期の到来

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This is the way.

ディズニールネサンス育ち。
『アラジン』は一生で一番多く観た映画になる予定。
ディズニーとスターウォーズ界隈を行ったり来たりしています。
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『ストレンジ・ワールド/もうひとつの世界』が大赤字だと騒がれています。

別記事でも書きましたが、ディズニー暗黒期の代表作『コルドロン』と同程度の興行収入で終わる可能性が高いです。

一部では「第三次暗黒期の到来では」とも囁かれています。

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そもそも暗黒期の定義ってあるの?

今回のテーマは大きく分けて3つ。

  • 過去2回の暗黒期
  • 近年の動向
  • 「第三次暗黒期」とは何なのか

過去から現在に話を流しながら検証して参ります。

私たちが今、本当に暗黒期に立ち会っているのだとしたら、貴重な経験でもあるはずです。

張り切って行ってみましょう!

ルネサンス前後の暗黒期

ディズニーの暗黒期は「ディズニー・ルネサンス」と呼ばれるムーブメントの前後の作品群を指すことが多いです。ここでは「ディズニー・ルネサンス」のはじまりを『リトル・マーメイド』(1989)とし、その直前の3作の概要を紹介します。

タイトル公開年(米)興行収入(万ドル)原作(発売年)
きつねと猟犬19816,350The Fox and the Hound(1967)
コルドロン19852,130The Black Cauldron(1965)
オリビアちゃんの大冒険19863,870The Rescuers(1959)

『きつねと猟犬』はナイン・オールドメンの引退作品ということもあり、興行的には成功しました。しかし続く2作は非常に苦戦していることが興行収入からもよくわかりますね。

『きつねと猟犬』の前作『ビアンカの大冒険』(1977年)の興行収入は1.69億ドルです。
つまり1981年時点で興行収入が1/3にまで落ちています。

この「第一次暗黒期」の原因は以下のように考えられています。

  • 第一次黄金期を支えたアニメーター“ナイン・オールドメン”の引退
  • 11名のアニメーターの引き抜き
  • テレビアニメーションへの注力
©️Disney
伝説のアニメーター“ナイン・オールドメン”

『オリビアちゃんの大冒険』から3年後の1989年に『リトル・マーメイド』が公開。2.35億ドルの興行収入を上げ、「ディズニー・ルネサンス」が始まりました。

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なぜ『リトル・マーメイド』は興行的に成功したのか?

『リトル・マーメイド』の成功の一因は原点回帰です。

『リトル・マーメイド』の原作『人魚姫』の映画化は、ウォルト・ディズニーが40年代から企画していました。ウォルトが温めていた企画を動かし、さらにミュージカル色を強くしたことが“原点回帰”と言えます。特に現在でもディズニー作品で活躍している作曲家アラン・メンケンが参加するようになったことは大きいでしょう。

『きつねと猟犬』『コルドロン』『オリビアちゃんの大冒険』にも原作があります。しかしいずれもグリム童話やアンデルセンに勝る知名度はありません。そしていずれもかつてのディズニー作品のようなミュージカル色はなく、物語に特化した作品なのです。

その後、『美女と野獣』(1991年)『アラジン』(1992年)とミュージカル路線でヒット作を連発します。

ディズニー・ルネサンスにおける興行収入のピークは『ライオン・キング』(1994年)の10.84億ドル。

ドン底だった『コルドロン』(1985年)の50倍だから笑っちゃいますね。たった9年でここまで回復するとは、驚きです。

しかしそんなディズニー・ルネサンスにも終わりが来ます。一般的には『ターザン』(1999年)がディズニー・ルネサンスの最後の作品です。こちらの興行収入は4.482億ドル。興行的には『ライオン・キング』以降で最高額であり、主題歌がアカデミー賞歌曲賞を受賞するなど華々しい成績を残しました。

©️Disney
ターザンとジェーンの名場面

そして『ターザン』以降が第二次暗黒期です。ここから作品の概要を紹介します。

タイトル 公開年(米)興行収入(億ドル)原作
ダイナソー20003.498なし
ラマになった王様20001.696なし
アトランティス
失われた帝国
20011.861Vingt mille lieues sous les mers
(1870)
リロ&スティッチ20022.731なし
トレジャープラネット20021.1Treasure Island(1883)

この後も不遇の時代はしばらく続き、一般的に第二次暗黒期が明けたのは『塔の上のラプンツェル』(2010年)からだと言われています。

実に11年間も暗黒時代が続いた理由は何だったのでしょうか。

この「第二次暗黒期」の原因は以下のように考えられています。

  • ピクサーやドリームワークスの台頭
  • フルCGアニメへの移行が遅れた

00年代はディズニー以外のアニメ映画が大ヒットした時代でした。ピクサーは『モンスターズ・インク』(2002年)『ファインディング・ニモ』(2003年)、ドリームワークスは『シュレック』シリーズ(2001〜2010年)などがあります。

例えば『モンスターズ・インク』の興行収入は5.774ドル、『シュレック』は4.879ドル。同時期のディズニー作品の5倍程度の興行収入を上げているのです。

これらのCGアニメが人気を博すと、ディズニーのような2Dアニメはヴィジュアルから古くささが出てしまい、視聴者は遠のきます。ディズニー・ルネサンスの頃から作中で部分的にCGを使うことはありました。しかしピクサーやドリームワークスのような、フルCGで魅力的な作品を作るには時間がかかったのです。

©️Disney
初のフルCGアニメ『チキン・リトル』(2005年)

10年代の黄金期

第二次暗黒期は『塔の上のラプンツェル』(2010年)で過去のものになります。

タイトル公開年(米)興行収入(億ドル)原作
塔の上のラプンツェル20105.924Rapunzel(1790)
シュガー・ラッシュ20124.712なし
アナと雪の女王201312.8Sneedronningen(1844)
ベイマックス20146.578Big Hero 6(1998)
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アナ雪の興行収入すごっ!!

90年代を「ディズニー・ルネサンス」というなら、10年代は「ディズニー・ロマン(主義)」とでも表現しましょうか。

話は逸れますが、美術史におけるロマン主義とは以下のように説明されます。

ロマン主義とは18世紀ヨーロッパに興った文化・精神運動です。それまで主流であった古典主義・教条主義(理性的・合理的で「完全な美」を求める)への反発から生まれ、個人の主観を重視し、自我の解放と確立を目指しました。恋愛や自然賛美、過去への憧憬、民族意識の高揚など、抒情的かつ感情的な表現がその特徴です。

第1章 ロマン主義・天才主義期 | 啄木の思想をたどる

自分で喩えておきながら、ものすごくしっくりきた気がします。ディズニー・ロマン期を代表する曲『アナと雪の女王』の『Let It Be』が、この時代のすべてを表現していると言えるかもしれませんね。

個人の主観を『ズートピア』(2016年)で重視し、
『モアナと伝説の海』(2016年)で自我の解放と確率を目指し、
『アナと雪の女王2』(2019年)で民族意識の高揚を歌います。
マーベル原作の『ベイマックス』(2015年)では、原作にはない抒情的かつ感情的な表現を駆使して観る人を驚かせました。

©︎MARVEL
『ベイマックス』の原作『Big Hero 6』

ではどこまでがディズニー・ロマン期なのかというと、『アナと雪の女王2』まででしょう。コロナ前後ではっきりと明暗が分かれたと言えます。

『アナと雪の女王2』は14.5億ドルで、ディズニーの枠を飛び出し、アニメーション映画の興行収入世界第1位という大ヒットを飛ばしました。しかし『モアナと伝説の海』以降は続編制作に留まっており、『アナと雪の女王』のような大ヒット映画の続編であれば、同じく大ヒットすることは間違いないのです。

『シュガー・ラッシュ:オンライン』(2018年)と『アナと雪の女王2』という続編カードを切ってしまったディズニーは、コロナ禍で一体どのような施策を打ち出したのでしょうか。

第三次暗黒期は自業自得?

世界中がコロナ禍に突入した2020年、ディズニー単体でアニメ新作は出していません。一方ピクサーは『2分の1の魔法』『ソウルフル・ワールド』の2つの作品を公開しています。

『2分の1の魔法』はアメリカでは3月に劇場公開(日本では8月に延期)したものの、『ソウルフル・ワールド』は当初予定していた劇場公開を見合わせ、ディズニー・プラスで配信公開されました。

この流れはしばらく続き、2021年は『ラーヤと龍の王国』『あの夏のルカ』がディズニー・プラスで配信公開。同年11月公開の『ミラベルと魔法だらけの家』でやっと予定通り劇場公開されることに。

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コロナ禍で劇場じゃなくても新作を観れるのは手軽だったけど…

新作をディズニー・プラスの会員限定で配信するという囲い込みが、第三次暗黒期の一因になったと言えるでしょう。

ディズニー・プラスの会員数は1.6億人で、業界1位のネットフリックスの2.2億人に迫っています。しかも会員数が徐々に減っているネットフリックスに対して、ディズニー・プラスの会員数は増えているという状況。

会員数では勝ち組と言えるディズニーですが、劇場で不特定多数に作品を観てもらう機会を自ら捨てていたのは得策ではないと言える理由があります。

From the Academy Award®-winning team—directors Jennifer Lee and Chris Buck, and producer Peter Del Vecho—and featuring the voices of Idina Menzel, Kristen Bell, Jonathan Groff and Josh Gad, and the music of Oscar®-winning songwriters Kristen Anderson-Lopez and Robert Lopez, Walt Disney Animation Studios’ “Frozen 2” opens in U.S. theaters on Nov. 22, 2019. ©2019 Disney. All Rights Reserved.

例えばディズニー・ロマン期最大のヒット作『アナと雪の女王2』は、日本での観客動員数が1,000万人。全世界ではおよそ1億2,000万人が観たと推測されます。これは現在のディズニー・プラスの会員数とほぼイコールです。(『アナと雪の女王2』公開当時はディズニー・プラス提供開始直後のため会員数は1,000万人強。)

ディズニー・プラス会員が多いとは言え、その加入者の大多数が“ディズニーファン”であることは間違いありません。そのファン(1.5億人)に向けた施策と、一般の映画ファン(1.2億人)に向けた施策。この場合、一般の映画ファンに向けた施策を続けることで、ディズニーファンを増やすことも出来ます。すでにディズニーファンである1.5億人からの賛否両論より、一般の映画ファンも含めた1.2 億人からの賛否両論の方が、より多くの人からの信用も得やすいでしょう。

また第三次暗黒期の特徴として、ポリコレ問題も挙げられます。

よく聞くワードですが、今一度内容を確認しておきましょう。

ポリティカル・コレクトネス(英: political correctness、略称:PC、ポリコレ)とは、社会の特定のグループのメンバーに不快感や不利益を与えないように意図された政策または対策などを表す言葉の総称であり、人種、信条、性別などの違いによる偏見や差別を含まない中立的な表現や用語を用いることを指す。

ポリティカル・コレクネスト-wikipedia

ポリコレを重視するのは間違いではありません。しかし近年のディズニーではポリコレを重視するあまり、視聴者が観たいものが観れなくなっている現状があります。

例えば、実写版『ピノキオ』(2022年)では、ブルー・フェアリーを黒人女性が演じたことが話題になりました。

©️Disney
『ピノキオ』のブルー・フェアリー

いわゆる“ホワイト・ウォッシング”の逆の現象が起きているのです。

また作品の舞台が、アジアや南米など有色人種中心の国であることも多くなっています。『ラーヤと龍の王国』(2021年)『ミラベルと魔法だらけの家』(2021年)はもちろん、ピクサー作品では『私ときどきレッサーパンダ』(2022年)などがそれです。

ディズニー・クラシック作品の代表作『白雪姫』『シンデレラ』『眠れる森の美女』などをイメージする一般の映画ファンには取っ付きにくいテーマになっていると言わざるを得ません。

『ストレンジ・ワールド/もうひとつの世界』(2022年)では、舞台となるアヴァロニアは様々な人種の住む国です。サーチャーの妻は黒人、大統領はアジア系。またサーチャーの息子イーサンはゲイですが、誰もそれを咎めることはありません。

イーサンの祖父イェーガーは60代で、25年間ストレンジ・ワールドに閉じ込められていました。しかしイーサンがゲイであることについて、もちろん一切お咎めなし。『ストレンジ・ワールド/もうひとつの世界』がとぎだとわかってはいますが、この理想的でスムーズな展開には違和感を覚えました。

ポリコレ的な展開に違和感を覚えているうちは、まだ現実が物語に追いついていない証拠なのでしょう。しかし、この違和感のせいで本来魅力的で没頭できたはずの物語に感情移入できず、結果的に作品全体の評価を落としてしまっていることも事実だと言えます。

配信方法やポリコレ描写を巡って、一般のファン(一部のコアなファンも)を置いてけぼりにしたことがディズニーの第三次暗黒期の要因です。

過去の暗黒時代は、優秀なクリエイターの不足や、CGアニメ時代に乗り遅れたことが要因でした。しかし第三次暗黒期は、過去2回の暗黒期の反省から、世間より先に行き過ぎたのかもしれません。

過去から反省することは大切です。しかし世間の認識がディズニーに追いつくのを待っていては、暗黒期を脱するのは難しいでしょう。

パイオニアとして先を行く覚悟は一旦置いて、もう一度「みんなが観たいディズニー作品」を公開する精神を思い出して欲しいと切に願います。

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ディズニールネサンス育ち。
『アラジン』は一生で一番多く観た映画になる予定。
ディズニーとスターウォーズ界隈を行ったり来たりしています。
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