“ホールニューワールド”って実際どこなの?ディズニーソングで比較文化#2

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ayumi

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ディズニールネサンス育ち。
『アラジン』は一生で一番多く観た映画になる予定。
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ディズニーソングで比較文化#2、今回は『アラジン』の『A Whole New World』です。

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私が人生で一番観た映画(になる予定)が『アラジン』……!

劇中最大の見せ場

2019年の実写も良かったのですが、今回は1992年のアニメ版について考察していきます。

いわゆる“ディズニールネサンス”真っ只中の作品であり、アラン・メンケン作曲ティム・ライス作詞。

第65回アカデミー賞歌曲賞受賞、ゴールデングローブ賞主題歌賞受賞、グラミー賞最優秀楽曲賞と受賞歴だけで見ても右に出るものはいないレベルの名曲です。

『Let It Go』が00年代以降のディズニーソングの代表作なら、『A Whole New World』は間違いなく90年代のディズニーソング代表。

今回も英語/直訳/日本語の順で紹介していきます!

初々しいアラジンに注目

I can show you the world
shining, shimmering, splendid
Tell me princess,
now when did you last let your heart decide?

『A Whole New World』Tim Rice

君に世界を見せてあげるよ
色鮮やかにきらきら煌めいている
プリンセス、教えて
最後に自分の心に素直になったのはいつ?

見せてあげよう
輝く世界
プリンセス
自由の花を ホラ

『ホール・ニュー・ワールド』浅川れい子

アラジンパートです。

shining, shimmering, splendidは「the world」にかかる形容詞ですが、「princess」にもかかっている、と考えると素敵だなと個人的には思っています。

またアラジンはアグラバーの問題児で、自分の町のことを決して好きではないはずですが、ジャスミンに語りかけるときは「輝く世界」と言っているところが強がっているようでいじらしく感じます。


I can open your eyes
Take you wonder by wonder
Over, sideways and under on a magic carpet ride

『A Whole New World』Tim Rice

君の目を開けてあげるよ
次から次へ 素敵なところへ連れて行ってあげる
魔法の絨毯で 上下左右どこにでも

目を開いて
この広い世界を
魔法のじゅうたんに

身をまかせ

『ホール・ニュー・ワールド』浅川れい子

単語量にかなり差がありますが、ほとんど同じ意味です。

冒頭から「見せてあげる」「連れて行ってあげる」という表現が目立ちますが、この時点ではまだアラジンはジャスミンを見くびっているように感じます。

ジャスミンはその気になれば1人でお城を出て、町を徘徊するくらいの勇気はある女性です。

初めての恋にちょっと浮かれちゃったかな?と微笑ましく見守りましょう。


A whole new world
A new fantastic point of view

No one to tell us, “no”
Or where to go
Or say we’re only dreaming

『A Whole New World』Tim Rice

完全に新しい世界
新しくて素敵な物の見方
誰も僕らに“ノー”とは言わない
どこに行こうとも
僕らが夢だけ見ると言っても

おおぞら 雲は美しく
誰も僕ら 引きとめ
しばりはしない

『ホール・ニュー・ワールド』浅川れい子

日本語のタイトルが『ホール・ニュー・ワールド』なので、歌の中で「a whole new world」を意訳してもあまり違和感がありません。

point of view」は直訳すると「視点、観点」なのでそのまま記載しましたが、意訳するなら「立場、身分」と言ったところでしょうか。

日本語だとただ美しい景色にうっとりしながら歌っているだけのように感じますが、英語で読むといかにアラジンが自分の日常を窮屈に感じていたかが垣間見えるようです。

ホールニューワールドは“3人”の歌

A whole new world
A dazzling place I never knew

But when I’m way up here
It’s crystal clear

『A Whole New World』Tim Rice

完全に新しい世界
私が決して知らなかった目のくらむような場所
ここのずっと上にいれば
それは澄み切った水晶のよう

おおぞら
目がくらむけれど
ときめく胸 

初めて

『ホール・ニュー・ワールド』浅川れい子

やっとジャスミンのパートです。

歌詞とは関係ありませんが、この歌いだしのジャスミンの表情がたまりません。

英語では「めのくらむような場所」が「澄み切った水晶」のように見えるほど、「point of view」が変わったことを表現しています。

英語では単語数が多いので少々説明的な歌詞になっていますが、日本語だとジャスミンのわくわくした表情そのままの表現に置き換えられていてとても聴き心地が良いです。


That now I’m in a whole new world with you
(Now I’m in a whole new world)

『A Whole New World』Tim Rice

今 私はあなたと完全に新しい世界にいるなんて!
(今 私は完全に新しい世界にいる)

あなた見せてくれたの
(すばらしい世界を)

『ホール・ニュー・ワールド』浅川れい子

雲がソフトクリームになるシーンです。

ジャスミンパートの「That」は感嘆詞として訳すと、彼女の感動がより明確に表現されます。

それに呼応するようにアラジンパートはほぼ同じ歌詞を繰り返しますが、同時に魔法の絨毯も気分が高揚してソフトクリーム飛行をしているので、実はこの歌は“2人”の歌ではなく、“3人”の歌なのかもしれません。


Unbelievable sights
Indescribable feeling

Soaring, tumbling, freewheeling
Through an endless diamond sky

『A Whole New World』Tim Rice

信じられない光景
なんとも言えない感覚
舞い上がって、転がって、自由奔放に動き回る
限りないダイヤモンドの空を駆け抜ける

素敵すぎて信じられない
きらめく星はダイヤモンドね

『ホール・ニュー・ワールド』浅川れい子

前半のサビと同様、ジャスミンのパートはとても詩的です。

英語だと、魔法の絨毯でアクロバティックに飛び回る冒険を楽しんでいる様子が、手に取るようにわかります。

ジャスミンがタイタニックよろしく、手を広げる姿はディズニールネサンス期のプリンセスたちに共通する、好奇心に突き動かされた表情をしています。


A whole new world
(Don’t you dare close your eyes)
A hundred thousand things to see
(Hold your breath; it gets better)

『A Whole New World』Tim Rice

完全に新しい世界
(目を閉じるのは止めて)
たくさんのものが見える
(息を止めて、もっと良くなる)

A whole new world
(目を開いて)
初めての世界
(怖がらないで)

『ホール・ニュー・ワールド』浅川れい子

アラジンパートの「Don’t you dare」は割と強めな静止のフレーズですが、歌い方や表情からはそれは感じません。

ここではアラジンは“アリ王子”を演じているので、ジャスミンをエスコートするような表現が続きますが、実際にはアラジンもアグラバーの町を出たことはなく、少しは怯んでいるはずです。

自分自身にも言い聞かせていると考えると、少し強めの表現であっても納得がいきます。


I’m like a shooting star
I’ve come so far
I can’t go back to where I used to be

『A Whole New World』Tim Rice

流れ星になったみたい
遠くまで来てしまった
かつての場所にはもう戻れない

ながれ星は
ふしぎな
夢に満ちているのね

『ホール・ニュー・ワールド』浅川れい子

英語と日本語で全く違う歌になっています。

ジャスミンは明るい表情で歌っていますが、物理的にも精神的にも「I’ve come so far」という表現から、一抹の寂しさも感じられます。


ロマンティックとエキサイティング

A whole new world
(Every turn, a surprise)

With new horizons to pursue
(Every moment, red-letter)

『A Whole New World』Tim Rice

完全に新しい世界
(驚きだらけ)
追い求める地平線と共に
(すべての瞬間が記念になる)

すてきな
(星の海を)
新しい世界
(どうぞこのまま)

『ホール・ニュー・ワールド』浅川れい子

本文がアラジンパート、カッコ内がジャスミンパートです。

red-letter」は文字通り「赤文字」転じて「特筆すべき、記念すべき」という形容詞として使われます。

どうぞこのまま)という日本語では、とてもしとやかな女性像を感じますが、英語の(Every moment, red-letter)だと力強く、ジャスミンのキャラクターイメージにも影響しますね。


I’ll chase them anywhere
There’s time to spare
Let me share this whole new world with you

『A Whole New World』Tim Rice

どこへでも追いかけよう
自由な時間がそこにはある
完全に新しい世界をあなたと分け合おう

ふたりきりで
明日を
一緒に見つめよう

『ホール・ニュー・ワールド』浅川れい子

I’ll chase them」の「them」は、前フレーズの「A whole new world」に掛かると思うのですがどうでしょう。(自信がない)

A whole new world」を追いかける、なぜならそこには「time to spare」があるから、という意味。

ここまで「chase」「pursue」など追い求める動詞が多く感じますが、これはアラジンとジャスミン視点で「周りから置いて行かれている」という焦燥感から出てくる単語です。


A whole new world
(A whole new world)

That’s where we’ll be
(That’s where we’ll be)

『A Whole New World』Tim Rice

完全に新しい世界
(完全に新しい世界)
僕たちがいるべき場所
(私たちがいるべき場所)

このまま
(ふたりが)
すてきな
(世界を)

『ホール・ニュー・ワールド』浅川れい子

これほどの単語数の差がありながら、敢えて口数が少ない日本語の方がロマンチックです。

ここでも英語だと「自分たちが今いる環境は、本来いるべき場所ではない」というニュアンスが出ています。


A thrilling chase

(A wondrous place)

For you and me

『A Whole New World』Tim Rice

わくわくさせるチェイス
(驚くべき場所)
あなたと私のための

見つめて
(あなたと)
いつまでも

『ホール・ニュー・ワールド』浅川れい子

chase」は「追及」という意味ですが、この場合は魔法の絨毯で飛び回ったアクティビティのこと、また「ここではないどこか」新しい場所を追い求める心理の2つの意味があります。

やはりこの部分も日本語はロマンチック、英語だとエキサイティングで真逆の印象です。


A whole new world』の考察でした。

日本語だと良い意味でムダな言葉がない分、聴き手によって想像する余地が多く、それが特に後半のロマンチックな情景を演出しています。

一方英語では、アラジンとジャスミンが共に「新天地」を求めて旅をしているようなエキサイティングな感覚があり、恋愛の歌というよりもパワーソングのような印象です。

個人的には「A whole new world」とは、アラジンとジャスミンが共に生きることで見える世界のことをイメージしていましたが、英語で考察すると2人が理想とする「自由な世界」を言い表していました。

ayumi14

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アラジンとジャスミンが「恋人」というよりも「同志」に見えてきました…!

2019年の実写版『アラジン』では、日本語歌詞が新しくなっているので、こちらと合わせて聴き比べるのも面白いですね。

https://youtu.be/orTIKHXG0ig
どちらもアニメ版より大人っぽい声ですね

以上、『“ホールニューワールド”って実際どこなの?ディズニーソングで比較文化#2』でした。

ayumi

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『アラジン』は一生で一番多く観た映画になる予定。
ディズニーとスターウォーズ界隈を行ったり来たりしています。
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